「18歳以下に10万円」が検討されているようです。
しかし、一時金の効果は、そのお金を使ってしまうまでです。お金が無くなれば、効果はなくなります。
データサイエンスでは、因果律は、ある類似のグループに属するモノに対して、成立します。
その場合には、グループを形成する範疇を明確にする必要があります。
それは、「18歳以下」といって年齢区分の属性でもよいのですが、多くの場合には、こうした属性だけでは不十分で、空間的、時間的に範囲を設定します。
わかりやすくいえば、「18歳以下に10万円」に、効果があったか、なかったかを判断するには、10万円を支給してから、効果が出るまでの、前提とするタイムラグの範囲設定が必要です。
また、空間的には、「18歳以下に10万円」は、日本に住んでいる18歳以下の人を指すと思われますが、オールジャパンを1つにくくってよいか、ここにも、前提とする範囲設定が必要です。例えば、都市圏では効果がないが、非都市圏では、効果があるといった可能性も考えられます。
こうした前提を突き合わせずに、議論をしても、すれ違いになります。
さて、問題の本質は、日本の一人当たりGDPが増えないこと、労働生産性が上がらないことです。
そのためには、DXが必須ですし、社会人再教育も必要です。賃金体系もジョブ型でないと無理です。
IT人材には、誰でもなれる訳ではありませんので、IT人材向きでない人の処遇も問題になります。
現在は、どれもこれも進んでおらず、日本は先進国ではなくなっています。
正社員と非正規社員は、同一労働、同一賃金で扱われているとはいえません。
加谷珪一は、「年収400万円のサラリーマンにおける現実の所得税率は1・8%程度しかなく、事実上の無税に近い」といっています。2020年の日本全体の年収の中央値は370万円程(男女計)ですので、半分以上の人は、実質所得税を納めていません。
2015年の高齢者貧困率は、韓国、オーストラリア、米国、日本の順でしたが、アベノミクスの10年で、非正規雇用が増大しているので、このまま行くと、日本の高齢者の貧困率が増加することは必須です。
与党も、野党も、「18歳以下に10万円」のように、政策ですぐに効果がでることを期待していますが、いまのやり方では、問題を先送りして、社会不安が生じてしまいます。
アベノミクスの失敗の原因は、構造改革ができなかった、あるいは、構造改革をしなかったことです。
これから、構造改革は、容易ではないことがわかります。
逆に言えば、とりあえず、構造改革が起これば、第1段、それで、十分ではないでしょうか。
どこを変えれば、一番構造改革を起こしやすいのかという視点でものを考えてもよいのではないでしょうか。
こうした視点に立てば、最低賃金は、法律1つで変えられるので、DXや、賃金体系の入れ替えよりずっと容易です。
最低賃金を上げると、解雇が増えるという反論もあります。
しかし、まずは、雇用システムに構造改革を引き起こせれば、次のステップに進めると思います。
今までの、ケインズ的な政策の効果のエビデンスはありませんの、考え方を根本的に変える必要があります。
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「18歳以下に10万円」 政府与党検討、線引きが焦点 2021/11/05 朝日新聞デジタル
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b51a98a0b281f1d7482cb18a6cc2a923ddfbaa4
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実は中間層は「ほぼ無税」、なのに格差が「下方向」に拡大する異常な構図 2021/11/03 ニューズウィーク 加谷珪一
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/11/post-163.php
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韓国の「高齢者の貧困率」が、先進国で最悪になっている「深い理由」 2021/10/22 現代ビジネス
https://news.yahoo.co.jp/articles/496ad13e7225089455fd21c6c058a151b539e6fd?page=3
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高齢者の「貧困率が高い国」 1位韓国、日本4位 2015/12/15 フォーブス
https://forbesjapan.com/articles/detail/10540
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