衆議院選挙の公約の論点は、賃金上昇でした。
内容は、根拠を欠く、願望に近いもので、検討するには、値しないと思われます。
しかし、賃上げができない理由は、材料費の値上げを製品価格に転化できないからであるとも言われています。
そして、値上げをできない空気があるという評論家もいます。
つまり、いいものをやすくという論理から抜け出し、 良いものは高いという論理に展開する必要があるというわけです。
そこでは、いいものを安くという論理から、抜け出せない原因があるはずだと分析を進める人もいます。
ここで、「いいものを安くという論理が蔓延している」と賃上げ問題を論ずる人は言います。
しかし、エビデンスをとれば、そうは言えません。
良いものは高いという論理を展開してきたビジネスモデルもあります。
典型的な分野は、日本の家電業界です。
途上国、特に、中国が、「良いものを安く」という戦略で、家電製品を製造販売してくると、高くて良い物を作れば良いという戦略に固執します。
この戦略は、合理性があるわけではなく、社員の賃金を下げない、工場の海外移転をしないためには、販売価格を下げられないという理由から、逆算されています。 そして、この販売戦略は失敗で、白物家電は、国産がほぼ無くなります。
つまり、一見すると、高くても良いものは売れるという戦略も失敗しています。
しかし、白物家電について言えば、いらない機能がついているだけで、価格が高くなっているものがほとんどでした。
ソニーが、クオリアというブランドを立ち上げて、失敗した事例もあります。
問題は、良いものという目利きを間違った点にあります。
販売価格を上げられれば、賃金を上がられる可能性があります。
しかし、販売価格を上げても、売れなければ、賃金を支払えなくなります。 この時の問題解決は、低価格の製品と、高価格の製品の2種類の製品を作って、販売実績を見ながら、順次対応していくしかありません。
そこには、目利きとブランディング戦略が欠かせません。
値上げができないのは、目利きができていないこと、ブランディング戦略ができないことに原因があるのでは、ないでしょうか。
値上げできない空気があるという人もいますが、過去のエビデンスを見る限り、値上げ(原価が下がっているのに値下げをしないことも含む)をしていない例ばかりではありません。
また、為替レートを含む原材料費の変動によって価格は変動します。ネットやスーパーの実売価格は、毎時間変化します。
これからは、定価にこだわる時代でもありません。定価は、参考価格にして、卸の価格は、随時変動させることも可能です。
もちろん、このレベルのDXに対応できない企業は、生き残れませんが、そのことと、賃金上昇は別の話です。
中小企業は1社では、DXシステムを作れませんが、IT会社が、クラウド上のDXシステムサービスを中小企業に提供するビジネスチャンスがあるので、企業の大きさは、大きな問題ではありません。
つまり、問題の本質は、価格が値上げできないことではなく、ブランディング戦略にあります。
目利きとブランディングと価格設定の問題は、重要なので、別途考えます。
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