前回、「『覆い焼き』と『焼き込み』の部分指定に相当する処理が、マスクの設定」と説明したのですが、よく考えたら、このブログで、「覆い焼き」と「焼き込み」の説明をしていないことに気づきました。
しかし、例えば、Photoshopには、「覆い焼き・焼き込みツール」がありますので、Photoshopから、darktableにソフトを変更した人が、「darktableは、どこに、覆い焼き・焼き込みツールがあるんだろう」と疑問をもつことは十分に考えられます。
それならば、「覆い焼き」と「焼き込み」というキーワードを使った説明をしておくことも、有効ではないかと考えるに至りました。
「覆い焼き」と「焼き込み」は、アナログで書くと次になります。
覆い焼き:カバーを置いて、印画紙に当たる光を部分的に遮って、印画紙の感光を防ぎ、その部分の露光量を下げる手法。
焼き込み:一部を切り抜いた紙を使用し、切り抜いた部分だけに光をあてて、その部分の露光量を増やす手法。
デジタルで、考えれば、マスクの部分の露光をプラスに振るか、マイナスに振るかの違いなので、この2つをあえて、区別する必要はありません。
今回は、「焼き込み」の例を説明します。
写真1は、もとの画像です。手前が暗いですが、ヒストグラムを見ると、この状態で、右が切れています。
太陽の部分が白飛びしています。
写真2は、露光をプラスに振っていますが、白飛びがひどくなっています。
このような場合には、明るいところはいじらずに、暗い所だけを「焼き込み」する必要があります。
写真3は、露光モジュールのインスタンス(露光1)を追加し、露光1モジュールで、「焼き込み」用の描画マスクを作成しています。このマスクが、アナログであれば、「一部を切り抜いた紙」に相当します。
写真4では、マスクを使って、露光1で露光を右に振っています。
このように、太陽の周りはいじらずに、暗い部分だけが明るくなりました。
以上で、「焼き込み」の説明は終わりです。
しかし、darktableでは、トーンイコライザーがあるので、露光モジュールをつかって、「焼き込み」をする必要がある機会は少ないと思います。
以下では、露光モジュールを使わない方法を説明します。
写真5では、トーンイコライザーを立ち上げて、ハンバーガーアイコンをクリックして、「compress shadows/highlights (gf):strong」のプリセットを選択しています。
「覆い焼き」と「焼き込み」をする場合は、明るい部分の露出過多を抑えるために、明るい部分に、カバーをして、「覆い焼き」し、暗い部分の露出不足を解消するために、暗い部分に「一部を切り抜いた紙」を当てて、「焼き込み」をすることが原則です。トーンイコライザーは、ゾーンシステムに対応していますから、ゾーン単位の処理で構わなければ、マスクを併用せずに、トーンイコライザーだけで、処理ができます。
なお、トーンイコライザーとマスクを併用する例もあとで、追加する予定です。
「compress shadows/highlights (gf):strong」は、ゾーン単位で、明るいところの露光を押さえ、暗い所の露光を強めに現像することに対応します。
写真6が処理の結果です。写真4と似たような効果が得られています。
写真7は、写真6を仕上げたものです。
「compress shadows/highlights (gf):strong」を使うと、暗いところも、明るいところも明瞭に見えるようになりますが、これを使いすぎると写真にメリハリがなくなります。
写真8は、プリセットの「relight:fill in」を使っています。明かりの自然なグラデーションでは、写真6よりも、こちらが、好ましく思われます。
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