「共通基準による観光入込客統計」と「都道府県魅力度ランキング」

都道府県魅力度ランキング」に、対する知事の反応が出ています。

2021/10/12のTBS NEWSによると、群馬県は、「毎年発表される『都道府県魅力度ランキング』で、今年44位となった群馬県の山本県知事は12日の会見で、根拠が不明確だと法的措置も検討していることを明らかにしました」そうです。

これに、対して、調査会社は、「困惑している」というコメントを出しています。

2021/10/11の毎日新聞によると、茨城県の「大井川和彦知事は11日、報道陣の取材に応じ、『ランキング自体が賞味期限切れ。最下位になろうが痛くもかゆくもないというのが県民の本音では』と突き放した」そうです。

都道府県魅力度ランキング」のサンプル数は、昨年が600で今年が、1000なので、決して十分とは言えません。

そこで、都道府県別観光データを検索したところ、使えるデータは、次の3種類でした。

 

1)共通基準による観光入込客統計

2)宿泊旅行統計調査

3)観光関連サイト閲覧者数ランキング

 

一番使えるデータは、1)です。このデータがあれば、東京オリンピックのようなイベントの経済効果の推定ができます。この調査は、H22年から始まっていますが、全ての都道府県のデータがそろったことはありません。大阪府は、調査に参加していません。それ以外の都道府県も毎年数県がドロップアウトしています。

ちなみに、「共通基準による」というのは、それまで、調査方法が、都道府県ごとにバラバラで、全国集計できなかったので、H21年に初めて、共通ガイドラインをつくったという意味です。

毎年数県がドロップアウトしていることは、発展途上国並みの観光データのレベルであることを示しています。

これから、東京オリンピックの経済効果推定は、かなりいい加減だったことがわかります。ベースになるデータがそろっていないのです。

表1に、H29年の観光消費額総額を、ソートしたものを示します。H29年の理由は、「都道府県魅力度ランキング」の1位の北海道のデータがある最新の年次が、H29年だからです。

つまり、「都道府県魅力度ランキング」が、幅を効かせる理由は、「共通基準による観光入込客統計」のデータの不備にあるわけです。

表2は、宿泊旅行統計調査の観光宿泊者数のランキングです。この統計は、観光宿泊を識別できないため、施設ごとに過半数が観光宿泊者か、否かで施設を2分しています。ここでは、51%以上が、観光宿泊者である施設の宿泊者数総計を示しています。このデータは、「共通基準による観光入込客統計」の代わりにはなりません。例えば、首都圏で、茨城県、埼玉県は下位にありますが、これは山が浅く、道路のアクセスが良いため、宿泊する必要がないことを示しています。

それから、表1、表2、共に、人口の多い都道府県のポイントが高くなります。

観光関連サイト閲覧者数ランキングは、2019年と2020年のデータが公開されています。

茨城県の「観光いばらき」のWEBは、2019年のスマホ参照件数では、なんと第3位でしたが、2020年では順位を落としています。

まとめますと、「都道府県魅力度ランキング」を問題にするより、はるかに深刻な「共通基準による観光入込客統計」の不備の解消が急務と思われます。

 

表1 H29 共通基準による観光入込客統計 観光消費額総額(単位100万円)0はデータなし。

1 13 東京都 3640984
2 12 千葉県 1145921
3 40 福岡県 897834
4 14 神奈川県 751204
5 26 京都府 585428
6 01 北海道 583509
7 20 長野県 578900
8 09 栃木県 534362
9 11 埼玉県 519935
10 23 愛知県 473963
11 24 三重県 458063
12 19 山梨県 359098
13 10 群馬県 267129
14 21 岐阜県 228646
15 43 熊本県 220247
16 15 新潟県 216717
17 04 宮城県 213951
18 07 福島県 199320
19 25 滋賀県 170556
20 08 茨城県 165141
21 42 長崎県 163915
22 41 佐賀県 163254
23 06 山形県 149615
24 29 奈良県 130053
25 44 大分県 126382
26 30 和歌山県 125779
27 34 広島県 124171
28 16 富山県 115223
29 18 福井県 111219
30 35 山口県 106323
31 02 青森県 99497
32 03 岩手県 96048
33 38 愛媛県 95457
34 45 宮崎県 91351
35 37 香川県 89788
36 33 岡山県 85841
37 32 島根県 68215
38 05 秋田県 65994
39 36 徳島県 64114
40 31 鳥取県 60178
41 17 石川県 0
42 22 静岡県 0
43 27 大阪府 0
44 28 兵庫県 0
45 39 高知県 0
46 46 鹿児島県 0
47 47 沖縄県 0

 

表2 宿泊旅行統計調査 R2 観光を目的とする宿泊客が50%以上の宿泊施設の総宿泊数

1 13東京都 14,189,650
2 01北海道 11,707,050
3 47沖縄県 11,271,240
4 26京都府 10,582,140
5 27大阪府 8,924,790
6 12千葉県 8,255,980
7 20長野県 7,581,560
8 22静岡県 7,552,880
9 14神奈川県 6,379,450
10 28兵庫県 4,847,170
11 09栃木県 4,046,340
12 10群馬県 3,736,870
13 17石川県 3,369,270
14 07福島県 3,220,570
15 15新潟県 3,201,410
16 40福岡県 3,056,870
17 19山梨県 3,021,560
18 24三重県 2,960,060
19 23愛知県 2,913,690
20 44大分県 2,554,620
21 21岐阜県 2,549,350
22 30和歌山県 2,408,150
23 42長崎県 2,265,860
24 04宮城県 2,219,310
25 43熊本県 1,965,420
26 46鹿児島県 1,869,570
27 03岩手県 1,707,180
28 06山形県 1,482,420
29 25滋賀県 1,449,030
30 34広島県 1,423,160
31 29奈良県 1,260,060
32 18福井県 1,165,230
33 37香川県 1,144,230
34 35山口県 1,020,710
35 33岡山県 973,180
36 02青森県 970,200
37 32島根県 922,330
38 45宮崎県 914,400
39 38愛媛県 888,700
40 31鳥取県 881,650
41 05秋田県 870,270
42 16富山県 748,520
43 08茨城県 740,980
44 39高知県 732,970
45 41佐賀県 730,900
46 36徳島県 578,320
47 11埼玉県 558,400

 

  • 都道府県魅力度ランキングに群馬県知事怒り 法的措置も検討 2021/10/12 TBS NEWS

https://news.yahoo.co.jp/articles/34abf2c9cd6ef986e5362bbb7d268e6b1f3886bc

  • 群馬県知事の「法的措置」発言、調査会社が反発「意図が理解できない」 魅力度ランキングめぐり 2021/10/ 13 弁護士ドットコム ニュース

https://news.yahoo.co.jp/articles/07d8f45a6dfdaddbb37317682da47c5691e04579

  • 茨城知事「痛くもかゆくもない」 魅力度再び最下位に転落 2021/10/11 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/2b9ff40f6eacf4c27cec94971c214964825dda5f

  • 宿泊旅行統計調査

https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html

  • 共通基準による観光入込客統計

https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/irikomi.html

  • 【調査リリース】2020年観光関連サイト閲覧者数ランキング 2021/02/09 PRTIMES 株式会社ヴァリューズ

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000116.000007396.html

  • 【調査リリース】2019年観光関連サイト閲覧者数ランキング 2021/02/04 PRTIMES 株式会社ヴァリューズ

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000007396.html

 

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