デジタル・スキル教育の課題
「アイリスオーヤマの研究(2)」を掲載する予定でしたが、18日の日本記者クラブ主催の自民党総裁選候補の公開討論の見ていて、かなり、問題があると感じたので、予定を変更します。
経済対策は、4氏とも、給付です。
社会保障も、年金改革または、子育てへの給付です。
基本的に、「給付を増やす=>消費税を上げる」のループに落ち込んでいます。
欠けている視点は、生産性の向上で、特に、デジタル人材の育成です。
ロバート・フェルドマン氏と 加藤 晃氏は、著書の中で、 2030年までに1600万人が今の職を失い、再就職できるのは、1000万人といっています。しかし、この計算には、ダブルカウントがどこまで含まれているか不明です。兼業によって、売れっ子は、3つも4つも仕事をこなす可能性があります。再就職できる仕事が1000万件あっても、頭数はより小さい可能性があります。下手をすると600万人ではなく、800万人くらいが、就職できなくなります。
2015年頃から、世界では、デジタル・スキル教育が、注目されてきています。これは、先進国だけでなく、国連を通じで、途上国の教育援助にまで及んでいます。
コロナ禍で、デジタル・スキル教育の進展は、加速しています。
2021/08/26の日経クロステックでは、デジタル庁のデジタル化は、片手落ちであるという提言がなされています。これは、有料記事ですが、1ページ目は無料で読めます。
しかし、今時、デジタル庁のように、ソフトウェアの調達が、DXだと考えている人は、日本以外にはいません。
たとえば、Burning Glass Technologies が2018年に出した、「The New Foundational Skills of the Digital Economy Burning」では、次の3点をデジタル・スキルにあげています。
デジタル経済の新しい基礎スキルは、3つのグループに分かれます。
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ヒューマン・スキル Human Skillsは、社会的、創造的、批判的な知性を適用します。
このスキル(批判的思考、創造性、コミュニケーション、分析スキル、コラボレーション、関係構築)は、求められている「ソフトスキル」の多くのリストに含まれており、デジタル集約型経済全体で依然として高い需要があります。
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デジタル・ビルディング・ブロック・スキルDigital Building Block Skillsは、多くの職業にとって重要であり、従来のデジタル集約型の仕事の家族の外でますます有用になっています。
これらのスキルは、意欲的な機能アナリストやデータドリブンの意思決定に今まで、特に役立ってきました。これらのスキルには、データの分析、データの管理、ソフトウェア開発、コンピュータープログラミング、およびデジタルセキュリティとプライバシーが含まれます。
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ビジネス・エンネーブラ・スキルBusiness Enabler Skillsは、職場で総合的かつ統合的な役割を果たします。
これらのスキルにより、プロジェクト管理、ビジネスプロセス、データの伝達、デジタルデザインなど、他の場で使われたスキルを実際の状況に合わせて活用できます。
他の文献をみても、プログラミング以外に、認知科学、ビジネスなど2つのグループが追加されている場合が多いです。つまり、DXのDが、1/3、Xが、2/3です。
デジタル庁は、Xはできませんので、問題外になります。
自民党総裁選候の中には、授業料の無償化を公約に掲げる人もいましたが、ひどく古いと思います。
日本の大学は、大学卒業の資格があれば、大卒枠で、就職できると考える人がまだ多くいます。政治家は、ここに訴えて、票をとりに行きます。しかし、日本の大学には、問題があります。
第1に、出席不足以外での落第がほとんどないことです。つまり、卒業資格は、仕事ができることを意味しません。企業も、OJTでよいと考え、専門に関係なく、採用します。これが、大学にフィードバックしています。
第2は、デジタル・スキル教育が、貧弱です。
世界の大学は、デジタル・スキル教育に向けて、学科やカリキュラムの再編をしていますが、日本では、話題になりません。審議会のレポートがありますが、江戸時代のお家断絶のように、学部・学科の取りつぶし再編まで踏み込んだ検討は、聞こえてきません。
2021年4月26日に、マイクロソフトなど国内外の11社が、一般社団法人Japan Reskilling Initiativeを立ち上げています。デジタル・スキル教育を、大学が、変わるまで、待てないという趣旨だと思います。
フィンランドの「NAVIGATING NEW DIGITAL LANDSCAPE」には、国別比較がでていますが、米国とEUの国だけです。好意的にみれば、欧米だけを対象にしているといえますが、日本のデジタル・スキル教育が世界最先端を走っていれば、日本も、比較されたと思います。そのうちに、デジタル・スキル教育では、日本は、国際比較するに値しない位置と判断されるのも時間の問題と思われます。
- 盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識 単行本 – 2021/9/16 ロバート・フェルドマン, 加藤 晃
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ジャパン・リスキリング・イニシアチブ
https://www.jp-reskilling.org/
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「デジタル以前に問題がある」、官僚ら有志161人が平井大臣にぶつけた提言とは 2021/08/26 日経クロステック
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05950/
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The New Foundational Skills of the Digital Economy Burning Glass Technologies 2018
https://www.burning-glass.com/wp-content/uploads/New_Foundational_Skills.pdf
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Skills Next Bridging the Digital Skills Gap Alternative Pathways 2020/01
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Digital Skills For Our Digital Future 2021/01
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Digital Skills For a Digital Nation 2018/01
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The Learning Country Digital Transformation Skills Strategy 2021/05
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Shaping Europe’s digital future Digital skills
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/digital-skills
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Facing the Digital Transformation: are Digital Skills Enough? 2020/06
https://ec.europa.eu/info/sites/default/files/economy-finance/eb054_en.pdf
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The Why, the What and the How Digital Skills March 2021
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Digital Skills Insights 2020 ITU
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NAVIGATING NEW DIGITAL LANDSCAPE
https://www.businessfinland.fi/493a97/globalassets/julkaisut/navigating_new_digital_landscape.pdf
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