今回は、モノクローム写真の作り方をまとめておきます。
デジカメでは、フィルムと違って、モノクローム専用のセンサーはありませんので、グレースケールにRGBの値に重みをつけた値をのせて、モノクローム写真を作ります。
2010年頃までは、高感度モノクロ専用モードがついているデジカメもありましたが、最近のセンサーは、カラーでも、十分に高感度なので、モノクローム専用モードはなくなりました。
ここでは、RAWのカラー画像から、モノクローム画像を作る方法を検討します。
darktableで、モノクローム写真をつくる方法には、次があります。
このうち、2.チャネルミキサーは廃止予定ですので、今回は使いません。廃止予定の理由は、同じ機能が、カラーキャリブレーションに包含されていますので、不要になったためです。
残りの4種類の方法で、基本は、カラーキャリブレーションで、グレータブをつかって、モノクローム写真を作ります。
該当する部分のマニュアルは以下です。
グレータブ
カラーキャリブレーションのもう1つの非常に便利なアプリケーションは、チャネルを混合してグレースケール出力(モノクローム画像)を生成する機能です。 グレータブを選択し、赤、緑、青のスライダーを設定して、各チャネルが出力の明るさにどの程度寄与するかを制御します。 これは、次の行列の乗算と同等です。
肌の色を扱う場合、3つのチャネルの相対的な重みは、画像の詳細レベルに影響します。 赤([0.9、0.3、-0.3]など)に重みを付けると肌の色が滑らかになり、緑([0.4、0.75、-0.15]など)を強調するとより詳細になります。 どちらの場合も、不要な肌の質感を強調しないように、青いチャネルが縮小されています。
説明としては、これで、申し分ないのですが、パラメータの例は、[0.9、0.3、-0.3]と[0.4、0.75、-0.15]の2種類だけです。RGBのパラメータ設定は、合計を1にすることが原則です。
チャネルミキサーの古いマニュアルには、より多くのパラメータ設定の例が載っていました。
darktable3.6のマニュアルからは、そのパラメータ設定の例は削除されています。
表1に、古いチャネルミキサーのパラメータ設定の例を示します。
RGBの重みだけなので、このパラメータは、カラーキャリブレーションのグレータブでも使えるはずです。
しかし、表1を見ると、マイナスのパラメータはありません。チャネルミキサーをカラーキャリブレーションのグレータブに移植するときに、マイナスのパラメータが使えるように、拡張された可能性があります。その場合には、パラメータがすべてプラスの表1に、こだわることは不適切として、表1が削除された可能性があります。
表1 モノクロームのパラメータ設定の例
Film Type | Red | Green | Blue |
---|---|---|---|
AGFA 200X | 0.18 | 0.41 | 0.41 |
Agfapan 25 | 0.25 | 0.39 | 0.36 |
Agfapan 100 | 0.21 | 0.4 | 0.39 |
Agfapan 400 | 0.2 | 0.41 | 0.39 |
Ilford Delta 100 | 0.21 | 0.42 | 0.37 |
Ilford Delta 400 | 0.22 | 0.42 | 0.36 |
Ilford Delta 3200 | 0.31 | 0.36 | 0.33 |
Ilford FP4 | 0.28 | 0.41 | 0.31 |
Ilford HP5 | 0.23 | 0.37 | 0.4 |
Ilford Pan F | 0.33 | 0.36 | 0.31 |
Ilford SFX | 0.36 | 0.31 | 0.33 |
Ilford XP2 Super | 0.21 | 0.42 | 0.37 |
Kodak T-Max 100 | 0.24 | 0.37 | 0.39 |
Kodak T-Max 400 | 0.27 | 0.36 | 0.37 |
Kodak Tri-X 400 | 0.25 | 0.35 | 0.4 |
Normal Contrast | 0.43 | 0.33 | 0.3 |
High Contrast | 0.4 | 0.34 | 0.6 |
Generic B/W | 0.24 | 0.68 | 0.08 |
さて、本題に入ります。
写真1は、今回のサンプル画像です。
写真2は、カラーキャリブレーションのグレータブで、パラメータを[0.9、0.3、-0.3]に設定しています。
写真3は、モノクロームを使っています。モノクロームでは、円の大きさと中心の位置を移動させることで、モノクロームの色合いを調整します。
写真4は、Lut 3dで、Agfaのパラメータを使っています。
写真5は、Lut 3dで、Fuji filmのセピアのパラメータを使っています。ヒストグラムをみると、セピアは、カラー写真で、モノクロームではありません。この点は、フィルムとは全く異なります。
写真6は、筆者が登録しているStyle fileです。ここでは、 Fuji filmのAcrosを使います。
写真7は、 Style fileで、 Fuji filmのAcrosを選んで、モノクロームにしています。左の履歴を見ると、このスタイルファイルには、トーンカーブが含まれています。シーン参照ワークフローでは、フィルミックRGBをつかい、ベースカーブとトーンカーブは非推奨です。ですから、このStyle fileは使うべきではありません。
写真8は、左が、カラーキャリブレーションのグレータブを使い、右が、モノクローム・モジュールをつかっています。まつ毛の辺りを見ると、カラーキャリブレーションの方が、中間トーンが若干よいと思われますが、差は小さいです。
写真9は、左が、カラーキャリブレーションのグレータブを使い、右が、Style fileで、Fuji filmのAcrosを使っています。この場合には、ベースカーブをつかった右の画像では、中間トーンの劣化が見られます。
写真10は、カラーキャリブレーションのグレータブを使った例です。ここでは、カラーバランスのスライダーをチェックしています。モノクロームにすると、コントラスト以外のスラーダーは効かなくなります。
写真11は、カラーキャリブレーションのグレータブを使った例です。トーンイコライザーを使っています。
写真12は、カラーキャリブレーションのグレータブを使った例です。フィルミックRGBを使っています。
フィルミックRGBとトーンイコライザーは、アンセル・アダムスのゾーンシステムをデジタルで実現するためにつくられました。アダムスの写真は、ダイナミックレンジの広いモノクローム写真です。写真11と写真12を見ていただければ分かりますが、カラーキャリブレーションのグレータブを使ったあとで、フィルミックRGBとトーンイコライザーを使うと、非常に幅の広い写真表現を楽しむことができます。
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