タリバンが、アフガニスタンを制圧して、現政権は、国外に脱出したので、政権交代が成立しました。
2021/08/15のBBC Newsの報道は、「RUSIのワトリング博士は、アフガニスタン軍にとっての情勢は日に日に悪化しているものの、『まだ政治でなんとかなる状況かもしれない』と話す」と書いています。
2021/08/15のCNN.co.jpは、「CNNの報道によれば、米情報機関が行ったある評価ではアフガニスタンの首都カブールについて、9月11日の段階でタリバンに完全に包囲されるかもしれないと推定している。その後は短期間で陥落する可能性もあるという」といっています。
しかし、翌16日には、タリバンが政権交代をしたので、見通しのずれは大きいです。
2021/08/15の中国問題グローバル研究所の記事で、遠藤誉氏は、7月28日、タリバンが天津で王毅外相と会談したことを紹介し、タリバンのバラダールの以下の発言を伝えています。
――中国を訪問するチャンスを得たことに感謝する。中国は常にアフガニスタン国民の信頼できる良き友人であり、アフガニスタンの平和と和解のプロセスにおいて中国が果たした公平で積極的な役割は大きい。タリバンは、平和を目指し達成することに十分な誠意を持っており、すべての当事者と協力して、アフガニスタンの政治体制を確立し、すべてのアフガンニスタン国民に広く受け入れられ、人権や女性と子どもの権利と利益を守ることを望んでいる。
つまり、7月28日時点で、中国がタリバンを支援していたことは明白です。物資等の支援があった可能性も考えられます。
2021/08/16の毎日新聞は「国連安保理が緊急協議へ アフガン情勢巡り」の記事で、次のように書いています。
国連安全保障理事会は米東部時間16日午前(日本時間16日深夜)、緊急会合を開いてアフガニスタン情勢について協議する。グテレス事務総長も参加する。安保理は今月3日、タリバン政権の復活は支持しないとの報道声明を発表しており、今後の対応を話し合う。
ここで問題になるのは、「安保理は今月3日、タリバン政権の復活は支持しないとの報道声明」です。7月28日に中国が、タリバンを支持していれば、8月3日に、安保理が、タリバン政権の復活は支持しないと言う訳がありません。
8月3日の安保理の報道声明で、該当する部分は以下です。
The members of the Security Council called on both the Islamic Republic and the Taliban to engage meaningfully in an inclusive, Afghan-led and Afghan-owned peace process in order to make urgent progress towards a political settlement and a ceasefire.
安全保障理事会のメンバーは、イスラム共和国とタリバンの両方に、政治的解決と停戦に向けて緊急の進展を遂げるために、アフガニスタン主導およびアフガニスタン所有の和平プロセスを有意義で包括的に進めるよう求めた。
ここには、「タリバン政権の復活は支持しない」とは書かれていません。安保理は停戦が実現するのであれば、どちらが政権をとっても構わないというスタンスです。また、タリバンも7月28日の天津では、「タリバンは、平和を目指し達成することに十分な誠意を持っており、すべての当事者と協力して、アフガニスタンの政治体制を確立し、すべてのアフガンニスタン国民に広く受け入れられ、人権や女性と子どもの権利と利益を守ることを望んでいる」といっていますので、安保理も「人権や女性と子どもの権利と利益を守ること」について、別の声明で、再度、確認しています。
遠藤氏は、アフガニスタンが、米中対立の中で、中国よりのタリバン政権になるのは、米国の失政ではないかというスタンスと思われます。しかし、8月3日の安保理の報道声明を見ると、この時点で、バイデン政権は、アフガニスタンにタリバン政権が成立することを容認しています。つまり、米軍の撤退は、政権交代を前提としています。
むしろ、原因は、2021/04/14に、バイデン大統領は、アフガニスタンの駐留米軍を9月11日までに完全撤退させることを決めたと思われます。これを受けて、中国とタリバンが動いたと思われます。2021/07/06のNHKが伝えるように、 タジキスタンはロシアの影響下にあります。米国は、他タジキスタンは、ロシア、アフガニスタンは中国の影響下になることを容認しています。
2021/07/12の笹川平和財団の斎藤竜太の記事を見ると、タジキスタンなどの中央アジアは、軍事が、ロシア、経済は、中国の構図ができていた、第3国が入り込む余地はすくなそうです。
バイデン大統領の外交の基本に、「米国の民主主義を輸出すれば、その国が民主化するという今までの米国外交の基本を切り替える」という方針があり、対中国外交だけでなく、アフガニスタン外交もこの線にのっていたと思われます。
ただし、米大使館の撤退前に、タリバンが、カブールを制圧したので、スケジュールを読み違えたことは確かです。
8月16日の正午のNHKラジオは、安保理が、タリバンに反対しているような報道ですが、タリバンを推している中国が安保理のメンバーですから、これはあり得ないと思われます。
ここまで、証拠があると、BBCや、CNNが、見通し報道を誤った理由が、なにか、あるのかも知れません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c4aeae8dfa435a45b3bfa7893bf7946dd7305197
https://news.yahoo.co.jp/articles/75da2b8498808ed9ac70bf40f9b51f24b8ddd7cf
-
タリバンが米中の力関係を逆転させる 2021/08/15 中国問題グローバル研究所 遠藤誉
https://news.yahoo.co.jp/articles/663633884ca32f7723b55f483467ddcff47e2585
-
アフガニスタンの崩壊、責めを負うべきはバイデン氏 2021/08/15 CNN.co.jp
https://news.yahoo.co.jp/articles/6dd0b4513363b0db0b019748b5fcd87815fd2e8b
-
Security Council Press Statement on Escalating Violence in Afghanistan 2021/08/03 UN
https://www.un.org/press/en/2021/sc14592.doc.htm
-
タリバン、アフガン首都の大統領府掌握 ガニ大統領は出国 2021/08/16ロイター(カブール08/15) https://jp.reuters.com/article/afghanistan-conflict-idJPKBN2FG0MZ
-
米、アフガン退避支援で追加派兵 2日以内に大半の退去完了 2021/08/16ロイター(ワシントン08/15)
https://jp.reuters.com/article/afghanistan-conflict-blinken-idJPKBN2FG0NG
-
Taliban officials: there will be no transitional government in Afghanistan 2021/08/16 Reuters(KABUL, Aug 15 )
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210706/k10013121561000.html
https://www.spf.org/iina/articles/saito_01.html
前の記事
次の記事