共通の問題を整理する(3)

コロナ対策の破綻

コロナウイルスの感染拡大速度は落ちています。感染者数の減少にばかり目がいっていて、対策は、緊急事態宣言だけという混乱の極みになっています。

エビデンスに基づかない意思決定は、所詮は、占いレベルにとどまります。

従来の感染拡大の場面では、東京都の陽性率は、4から7%です。現在は、22%です。少なくとも、7%にまで、陽性率を下げるか、ロックダウンで接触を極端に抑えなければ、感染拡大は止まりません。22%では、7%の時の行動制限率を3分の1まで減らさないと従来の緊急事態宣言と同じ効果は、得られません。行動制限が効かない場合には、PCR検査で感染者を封じ込めをするしか手がありません。PCR検査を軽視してきたツケが来ています。空港では、無料で、PCR検査を受けられますが、陽性の場合には、搭乗できないので、利用者は5%程度らしいです。PCRを受けて、陰性であることを搭乗の条件にしない理由が理解できません。変異株が、地方に拡散するのをなんとしても、止めるという熱意が感じられません。

コロナ特集のテレビも非常に醜いものです。変異株を取り上げて、危機を煽るだけで、問題解決とは無縁の内容です。自宅療養者が、急増する中で、こうしたアジテートするだけで、問題解決につながらない番組を放映することには、倫理的な感覚の欠如を感じます。

日本経済の没落シナリオ

科学技術の国別比較は、8月14日の別の記事「日本のAI研究と科学技術研究の現状と課題」で扱っています。ここでの問題点は、次の点です。

科学技術は、経済発展の基礎です。現在では、富を生み出すのは、技術を生み出すことのできる人材です。お金が、富を生み出す効果は、2次的です。特に、AIについてみれば、グラフは、対数軸ですから、次の時代の技術は、中国、米国、インド、EU+英国グループにほぼ独占されます。あとは個人の能力の高いイスラエルとイランには幾らか独自技術を持つと思われますが、日本が残る可能性は、現状では、ほぼゼロです。対数軸で差があるということは、追いつくことは、絶望的に難しいということです。対数が、苦手な人向けに言えば、技術者の数を増やす場合に、10倍、100倍のレベルの対応が必要になります。

AIの記事の出典は、N新聞です。 N新聞の記事は、中国のAIが米国を超えたという内容ですが、そこには、このAI技術力の差の中で、日本経済がどのように生き残るべきかという視点はありません。お金よりも技術、人材の価値が高くなっています。人材を育てた国、優秀な人材を移民として受け入れた国だけが、経済発展をすることができます。しかし、この点は、全く、検討対象になっていません。

しかし、これは、N新聞の問題というよりも、直接の当事者である大学が、改革にむけた情報発信ができない点がより大きな問題です。

現在のコロナウイルスの感染拡大は、十分予想されたものです。予想可能だっただけではなく、予想されるシナリオの中では、マイルドな範囲の感染拡大です。それでも、対応できなかったということは、コロナ対策が全くできなかったことを意味します。その原因の一旦は、オブジェクト・ヒストリカルにあると考えます。コロナ対策を検討しているのではなく、コロナ感染拡大史の検討しかできなかったということです。過去の歴史には、未来に向けた問題解決の手順は含まれません。

同様に、AIのN新聞の記事もオブジェクト・ヒストリカルです。現代AI研究史になっています。そこには、AI研究を推進して、経済発展に取り残されないという視点はありません。この延長線には、今回のコロナ対策と同様に、日本経済の没落か、破綻がまっています。

オブジェクト・ヒストリカル:未来について語ること(4)~集団思考の事例研究(14) 2021/07/26

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