7月第5週の東京都の感染者数のまとめ~コロナウイルスのデータサイエンス(225)

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「令和3年7月30日 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見」(l.16-17)では、「東京では人工呼吸器が必要な重症者の数は、1月と比較しても半分程度にとどまり、そのための病床の利用率も2割程度に抑えられております」と発言していましたが、東京都の入院患者数は3000人で、病床数6000に対して、約50% で数字が合いません。

NHKのデータでは、7月27日の病床使用率は45%、入院率は20%、重症使用率は63%です。

病床使用率と入院率を間違えている可能性があります。

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0730kaiken.html

 

7月第5週の東京都の感染者数のまとめ

7月の第5週も終わるので、今週の7月31日までの感染者データをまとめておきます。

Google Transitデータも更新しました。

Googleの予測データも、7月28日版に更新して、これも7日移動平均をEstimatedでプロットしてあります。

東京都の検査データは7月29日に更新されています。

2021年7月29日 の(7日間移動平均値をもとに算出した)検査の陽性率は、19.0%(13.1%,8.1%,6.4%,5.5%,4.8,4.1,4.0,4.9,5.3,5.8, 6.8, 8.6, 6.9, 5.9, 5.2, 4.8, 4.2, 3.7, 3.7, 3.5, 3.3) %で、検査人数は9868.9人(6604.1人,8164.4人,8877.4人,7214人,6810.4人,6785.7人,4688.4人,7058.6人,7810.1人, 7877.4人, 9419.4人, 6331.4人, 7903.6人, 8450.0人, 7633.4人, 7086.7人, 6588.0人, 6688.9人, 6035.3人, 6760.7人, 6417.9人) です。()は、7月23日、7月15日、7月8日、7月1日、6月24日、6月17日、6月11日、6月3日、5月27日、5月21日、5月13日 、5月6日、4月29日、4月22日、4月15日、4月8日、4月1日、3月23日、3月19日、3月16日と3月9日の速報値です。検査データが、更新されると、データは日付をさかのぼって修正されますが、以上の値は速報値の暫定値です。

なお、暫定値を訂正した陽性率は、図2にのせています。

図1が、7月28日版のGoogleの予測値と、東京都の感染者数、経路不明感染者数です。

行動制限率は、7日移動平均では、-37%まで緩んでいます。これは、連休中の2日の値が-50%を越えた点が効いています。連休になると行動制限が増加する傾向は過去にも見られます。

21日、-29%、22日、-27%、23日、-51%、24日-、56%なので、21日と22日は効果がありませんが、これはにわか仕立ての休日で、休めなかった人もいたためと推測されます。

今週も、感染者数は急増しています。7日移動平均で2900人を超えました。

この増加率は過去になく拡大速度です。

6月8日のGoogle予測は、感染者数は50人まで下がるというものでした。

6月16日のGoogle予測は、感染者数は112人まで下がるというものでした。

6月23日のGoogle予測は、感染者数は200人まで下がるというものでした。

6月29日のGoogle予測は、感染者数は600人で高止まりです。

7月7日のGoogle予測は、感染者数は1000人になります。

7月14日のGoogle予測は、感染者数はピークで1200人になり、その後減少します。

7月21日のGoogle予測は、感染者数は今後600人まで減少します。

図1の7月28日のGoogle予測は、感染者数は3000を超え、その後、2400人まで減少します。

図2に、11月1日からの東京都の経路不明率と陽性率を示します。経路不明率は60%くらいの高止まりです。一方、陽性率は、22%近いです。

図3に、感染者数の1週間前の同じ曜日との差を示しています。東京都が前週との比を使うようになったので、前週との減少比率(1week_ratio)もプロットしてあります。感染者数は増加しています。この行動制限率は移動平均ではなく、生の値で、日付は12日ずらしています。値はほぼ一定です。

31日のデータが過去のデータに比べ、あまりにオーバーレンジなので、プロット範囲を変更しました。

まとめると、今週は、感染者数と陽性率は、急増しています。

表1と図4に変異株のデータを示します。トレンドでみれば、変異株率は60%を超えています。

これが、感染拡大の理由と思われます。

まとめ

感染リスクを接触頻度で考えると

保菌者数/人口x行動率

になります。人口は一定なので、

感染リスクは、保菌者数 x 行動率に比例します。

コブダグラス型の関数を考えれば、

保菌者数は、行動制限率がプラスの符号の場合、行動率(=1-行動制限率)に、比例し、次式になります。

pow(感染者数,a) x pow(陽性率,b) x pow(経路不明率、c) x (1ー行動制限率)

経路不明率の係数cはよくわかりませんが、aとbは、1に近いでしょう。

以下、経路不明率を無視します。

前回のピークの1月11日は、感染者数1800人、経路不明率66%、陽性率13%でした。

行動制限率の最大は56%でした。

現在の行動制限率は37% です。つまり、2021年の1月頃の水準まで行動制限すれば、20%下げられます。

31日の感染者数は2900で、直近の陽性率は22%です。

1月11日の係数は、

1800x0.13x(1-0.57)=100

7月31日の係数は、

2900x0.22x(1-0.37)=402

仮に、57%まで行動制限が下がったとすると

2900x0.22x(1-0.57)=274

になります。ですから、普通の行動制限の効果はありません。

係数を100にするには、行動制限率をzとして

2900x0.22x(1-z)=100

を解きますから

1-z=0.16

z=0.84

となります。つまり、行動制限に頼るのであれば、ロックダウンしないと効果がありません。

なお、以上の計算では、変異株がうつりやすいという効果は見ていませんので、仮に、1.5倍拡がりやすいとすれば、

1ーz=0.16x0.6666

z=0.89

になります。

しかし、先週も申し上げましたように、非現実的なロックダウンより、緊急事態宣言のガイドラインの見直しを先に行うべきです。

過去1年の経緯を見ると、最大の問題は、国民の政治参加のシステムの問題にあると思います。

結局、対策をするという口約束を信用して、1年たっても、PCR検査数も、病床数も増えませんでした。しかし、今からでは、間に合いません。ということは、結果が出るまで、政治家や行政に任せきりにする政治参加のシステム、結果が悪ければ、選挙で落選するというフィードバックシステムには欠陥があり、機能していないということです。おそらく、政策の作成過程から、政治参加と監視やチェックができるようなシステムに変えない限りは、コロナ対策と同じような問題が、今後、経済対策や温暖化対策でも起こると思われます。

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表1 都内の変異株スクリーニング検査の実施状況 (東京都による)

 

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図1 東京都の感染者数の推移(左軸:人、感染者数、経路不明感染者数、右軸:%、Google Transitデータ、7月28日版Google予測データ)

 

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図2 東京都の経路不明率と陽性率(右軸:経路不明率%、左軸:陽性率%)

 

 

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図3 東京都の感染者数の前週の同じ曜日との比較とGoogle Transit(左軸:感染者数の差、人、右軸:行動制限率%、右軸:感染者数の比x(ー1))

 

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図4 変異株の感染比率

 

  • 報道発表 令和3年 7月(都内の変異株スクリーニング検査の実施状況)

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/07/index.html

  • 都内の変異株スクリーニング検査の実施状況 7月29日

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/henikabu/screening.html

 

  • COVID-19 感染予測 (日本版)7月28日版

https://datastudio.google.com/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/4KwoB?s=nXbF2P6La2M

  • NHK特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2021.7.31>2021-7-29version.