darktableのフィルムシミュレーション(1)~darktableのプリセットとスタイルファイル(5)

Fuji X-T20 film simulation packs by Stuart Sowerby(1)

今回から、darktableのフィルムシミュレーションを取り上げます。

おそらく、フリーのフイルムシミュレーションの走りは、Petteri Sulonenさんが2006年頃に出したフォトショップトーンカーブです。この解説「Curves and Films by Petteri Sulonen 」は、リンク切れですが、トーンカーブのパラメータへのリンク自体はまだ、生きていて、「Simulating color films with curves by Petteri Sulonen」でたどることができます。このパラメータは、アドビの8BFプラグインが使える環境であれば、利用可能です。例えば、写真1のIrfanviewのSmartCurvesでも利用可能なはずです。

「Common Color Curves (Portra, Provia, Velvia)」は、このパラメータをRawTherapeeのトーンカーブパラメータに変換しています。

この中身は、RGBで独立したトーンカーブを定義しています。例えば、ベルビアのパラメータファイルの内容は次です。

Velvia-Curves

[Version]
AppVersion=4.2.1148
Version=326

[Exposure]
CurveMode=FilmLike
Curve=1;0;0;0.501961;0.462745;0.866667;0.843137;1;1;

[RGB Curves]
LumaMode=false
rCurve=1;0;0;0.160784;0.109804;0.717647;0.819608;1;1;
gCurve=1;0;0;0.098039;0.082353;0.372549;0.4;0.709804;0.815686;1;1;
bCurve=1;0;0;0.098039;0.082353;0.478431;0.6;0.647059;0.807843;1;1;

さて、以上は前書きで、ここからが本題になります。

「Fuji X-T20 film simulation packs for Darktable and RawTherapee by Stuart Sowerby」は、darktableとRawTherapee用のファイルを提供しています。daktbale用はスタイルファイルです。

写真2は、そのうちのプロビアのスタイルを適用した例です。

履歴を見れば、ベースカーブがスキップされていること、カラールックアップテーブル、インプットカラープロファイル、トーンカーブの3つのモジュールが使われたことがわかります。

写真3と写真4のように、履歴の部分でも、モジュールのパラーメータの内容を表示させることができます。

写真5が、プロビアのトーンカーブです。

写真6が、比較のために乗せたベルビアのトーンカーブです。

前書きのところで述べましたように、Petteri SulonenさんはRGBごとにトーンカーブを作って、そのカーブを微妙にずらすことで、フィルムシミュレーションを実現しています。「Common Color Curves (Portra, Provia, Velvia)」も、RawTherapeeで、RGB独立にトーンカーブを変化させています。

ところが、写真5も写真6も、トーンカーブはRGB共通です。これで、フィルムシミュレーションをするのは難しいはずです。どうして、RGBのトーンカーブを独立にしなかったのかという疑問がわきました。

答えは、写真7にあります。darktableは、RGB色空間のトーンカーブを独立して処理することができないのです。「RGB色空間のトーンカーブを独立して処理することができない」ソフトは珍しいので、最初は、間違いかと思いましたが、darktable3.4は、この仕様です。darktableは、今までは、色空間はLabを基本にしてきました。Lab色空間であれば、Labは独立してトーンカーブを設定できます。RGBで、カーブを独立させられない補償がカラールックアップテーブルです。つまり、次の2つの方法があり、Stuart Sowerbyさんは、1.の方法をとっています。

  1. RGB共通トーンカーブ+カラールックアップテーブル

  2. Lab独立トーンカーブ

次回に、取り上げようと思いますが、t3mujinpackのベルビアは、2.の方法をとっています。

ところで、Fuji X-T20 film simulation packsのRawTherapeeのデータは、LUT3D(HaldCLUT)です。darktableのLUT3Dは、RawTherapee互換ですから、実は、darktableでRawTherapeeのデータが使えます。

「Fuji X-T20 film simulation packs for Darktable and RawTherapee by Stuart Sowerby」は、2017年に書かれています。daktableがLUT3Dni対応したのは、2019年です。このために、おかしくなっているのです。

現在のdarktableでは「Fuji X-T20 film simulation packs for Darktable and RawTherapee by Stuart Sowerby」の2種類のデータのうち、RawTherapeeのデータを使うべきなのです。この使用例は、後で示します。

今回のまとめとして、darktableのバージョンアップに触れておきます。現在のバージョンアップは、Lab色空間からRGB色空間に切り替えています。ですから、RGBが独立して利用できるようになるのは、時間の問題と思います。Stuart Sowerbyさんのように、1.をとる人は少ないと思われます。逆に言えば、今までのスタイルファイルのトーンカーブは、2.の「Lab独立トーンカーブ」が使われている可能性が高くなります。この点は、スタイルファイルを使う場合に、注意する必要があります。

 

  • Curves and Films by Petteri Sulonen (リンク切れ)

http://www.prime-junta.net/pont/How_to/100_Curves_and_Films/_Curves_and_films.html

  • Simulating color films with curves by Petteri Sulonen

https://www.dpreview.com/forums/thread/1878935

The curves in question are here:

[ http://www.prime-junta.net/dropbox/velviaesque.acv ] [ http://www.prime-junta.net/dropbox/proviaesque.acv ] [ http://www.prime-junta.net/dropbox/npsesque.acv ] [ http://www.prime-junta.net/dropbox/fadedneg.acv ]

[ http://www.prime-junta.net/dropbox/velviaesque2.acv ]

[ http://www.prime-junta.net/dropbox/velviaesque3.acv ]

https://discuss.pixls.us/t/common-color-curves-portra-provia-velvia/2154/26

  • Fuji X-T20 film simulation packs for Darktable and RawTherapee by Stuart Sowerby 2017

https://thepenguin.eu/2018-01-21-fuji-xt20-film-simulation-packs-for-darktable-and-rawrtherapee/

  • A new module: lut3d 2019

https://www.darktable.org/2019/05/New%20module-lut3d/

  • Film Simulation (HaldCLUT) Pat David 2015

http://rawpedia.rawtherapee.com/Film_Simulation

  • t3mujinpack

https://blog.joaoalmeidaphotography.com/en/t3mujinpack-film-darktable/

 

 

 

f:id:computer_philosopher:20210612220315j:plain

写真1 IrfanviewのSmartCurves

 

f:id:computer_philosopher:20210612220347j:plain

写真2 Fuji X-T20 film simulation packsのプロビア

 

 

f:id:computer_philosopher:20210612220409j:plain

写真3 トーンカーブの履歴

 

 

f:id:computer_philosopher:20210612220429j:plain

写真4 カラールックアップテーブルの履歴

 

f:id:computer_philosopher:20210612220448j:plain

写真5 トーンカーブ(プロビア)

 

 

f:id:computer_philosopher:20210612220624j:plain

写真6 トーンカーブ(ベルビア)

 

f:id:computer_philosopher:20210612220537j:plain

写真7 トーンカーブの色空間

 

前の記事

darktableのプリセットとスタイルファイル(4) 2021/06/12

 

次の記事

darktableのフィルムシミュレーション(2)~darktableのプリセットとスタイルファイル(6) 2021/06/14