情報発信とコロナウィルス

オリンピックがどうなるかは依然としてはっきりしません。はっきりしていることは、夏の開催であれば、ワクチン接種は間に合わないということです。 緊急事態宣言も、一体何を要請されているのかわからなくなっています。 例えば、感染経路のデータを検索すると、パラパラと見つかりますが、飲食店は10%くらいです。医療機関、学校、家庭などが主な感染ルートに見えますが、そもそも、感染経路のデータを全体として、分析したレポートはありません。利用可能な公開データもなさそうです。つまり、緊急事態宣言の個別の要請には、根拠となるエビデンスが公開されていません。第1回目の緊急事態宣言の時には、データが少なかったので、予防措置として、リスクの考えられる行動は、全て避けるという要請にも説得力がありました。しかし、1年経っていますから、データは揃っているはずで、依然として、1回目と同じような要請をされても、反応は少なくなってしまいます。 人間の脳は、同じような刺激を継続して受け続けると、刺激に反応しなくなります。 緊急事態宣言も3回目ですし、名称が正確にすぐ出てきませんが、緊急事態宣言もどきも出されていました。 1年前には、ワクチンが打てるまでは、我慢と思った人も多いと思われます。今は、ワクチンは遅れた上に、GoToで感染を広げましたし、医療体制が組めないのに、オリンピックは依然として、実施すると言っていますから、緊急事態宣言に対する緊張の糸は切れています。 決め手であると言われたワクチンは接種が遅れた上に、変異ウイルスが出てきています。今のところ、ワクチンは、変異ウイルスにも効いていますが、どこかで、ワクチンの効かない変異ウイルスが出ると予想されています。つまり、1年前に言われたほど、ワクチンは、万能ではなさそうです。そうなると、ウイルスの根絶は難しく、共存していくしか方法がないかもしれません。鳥インフルエンザと同じような対応です。

18日のNHKのテレビでは、感染予測モデルの話が出ていたようです。このモデルは、政府の要請で予測をしているようなのですが、予測結果が、政策にどのように反映されたのかは、はっきりしません。この予測が、緊急事態宣言に反映されたとは、言えないのではないでしょうか。

こうして、情報を並べてみると、情報発信の仕方に欠陥があるように思われてなりません。

飛行機事故の墜落の原因究明では、過失責任は問いません。パイロットが誤操作をして、事故が起こっても、原因究明に協力する限りは、過失責任は問われません。問題は、誤操作をしやすい飛行機のシステムにあったと考えます。こうして、飛行機のシステムを改善すると、その後に、同じような事故が発生する可能性が下がり、安全性が向上します。誤操作をしたパイロットに刑罰を科すことはできますが、そうすると、同様の事故が起こるリスクを減らすことができません。つまり、既に、起こってしまった事故より、将来の事故のリスクの方を優先すべきであると考えます。

非常事態宣言は、パイロットに刑罰を与える方法です。非常事態宣言が守られないとしたら、それは、宣言を守らない個人に責任があるというメッセージを繰り返しています。 しかし、問題は、非常事態宣言のシステムであり、情報発信のシステムであると思われます。

結局のところ、コロナウイルスに対応するために、今までの社会システムの問題点のどこを改善していきたいのかという明確なビジョンの情報発信ができていないことが問題と思われます。 マスクをしたり、アルコール消毒をしたり、アクリル板を使用する対策は、広く行われています。 民間企業では、リモートワークも広がっています。リモートワークが一番遅れているのは、官庁であると言われています。 そうなると、政府は、言うこととやることが一致していないと言うメッセージを発信していることになります。 コロナウィルスの場合には、外国との比較が可能です。ワクチンの接種の広まりを見れば、日本政府の成績は、良いとは言えません。 こう書くと、政府を非難しているように、とられがちですが、問題は、飛行機事故と同じように、特定の個人に問題があるのではなく、政府のシステムにあると言いたいわけです。 非常事態宣言が繰り返され、特に、2回目と3回目の間は短かったので、情報発信システムに問題があると感じている人も多いのではないでしょうか。

 

  • 秋に第5波到来も!? 新型コロナ最新予測 2021/04/18 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/nhkspecial_20210418/