マスコミは、許認可にかかわる政治家や官僚が、接待を受けた疑惑が取りざたされたときに、許認可にかかわる話は出なかったという本人の弁を記事にしています。しかし、そこには、倫理の視点はありません。
アメリカがバイデン大統領になって、対中国政策が対立的になったという解説が広まっています。しかし、そこにも倫理の視点はありません。前任者のトランプ大統領が一部の人から嫌われた点は、倫理の問題を全く無視したことに原因があります。バイデン大統領になって、基本的な倫理の問題は、経済や外交より優先していると思われます。
1989年の天安門事件の後で、諸外国が、倫理問題を経済問題より優先して、経済制裁措置に踏み切ります。その時に、経済を優先し、倫理を棚上げにして、経済制裁を真っ先に解除した国は日本でした。ある意味では、中国の倫理無視の種をまいたとも言えます。
技術者養成の国際標準カリキュラムでは、技術者倫理が必修科目になっています。つまり、倫理を守れない人には、エンジニアの資格を出すべきではないというルールです。過去に、自動車メーカーで、排気ガスのデータを捏造していたことがわかって、企業が謝罪をしたことがあります。マスコミは、接待疑惑と同じように、誰が違反をしたかという報道に終始していました。しかし、問題は、特定の企業、特定の個人が違反をしたということに留まりません。このような問題が発生することは、技術者養成カリキュラムの倫理教育が機能していなかったことを示しています。つまり、技術者養成システムに問題があるのなら、システムを改善すべきであると思われます。そして、それを、行わないことは、先進国としては、あるまじきことになります。
接待疑惑も同じで、今のように、個人を非難するだけで、システムを倫理にあうように改善しなければ、国際社会は、日本では、倫理が機能していないと見ます。
現在の香港問題への倫理の扱いは、将来、尖閣諸島問題が起きた時の、諸外国の支持にかかわるでしょう。
株式投資でも、ESG(Environmental; Social;Governance)投資のように、倫理的に問題のない企業にのみ投資すべきという流れが出てきています。インポッシブル・フードのような植物で作った肉に、関心があつまるのも、動物を虐待しない、水資源を浪費しない、倫理的に正しい食生活を送るべきと考える人が増えているからです。
このような状況を見れば、現在の日本では、倫理は危機的な状況といえましょう。しかし、日本の官僚や政治家が、昔から、倫理を無視してきたわけではありません。
1896年6月15日午後7時に、明治三陸地震と津波が起こります。時の総理大臣は、伊藤博文で、板垣は内務大臣でした。被害の状況が明らかになって、板垣は、被災地に行くことにします。その時の日程は、以下です。
6月22日 東京発 直行列車
6月23日 8時25分 盛岡着
6月24日 盛岡発 松草泊 人力車
6月25日 川内伯 人力車
現在であれば、ヘリコプターで、半日もかからずに、現地にいけると思いますが、当時は、列車と人力車を乗り継いで、5日もかかっています。しかし、この対応も、当時の新聞からは、到着が遅いとたたかれたようです。
昭和の政治家であれば、倫理的に優れた政治家として伊藤正義が、知られています。
伊藤は、農林省の官僚から、政治家になります。農林省の官僚の時に、部下が自殺する事故が起こります。その時に、伊藤は涙を流して、故人に許しを求めたことが、伝説のように伝わっています。
最近でも、書類の捏造に絡んで、自殺した官僚がいましたが、伊藤のような上司はいなかったようです。
伊藤は、1994年5月20日に亡くなります。盟友後藤田は「あなたは政治家の中では珍しい愚直なまでの潔癖漢でもありました。こうした姿勢を貫きとおしたことに、私はすがすがしさ、美しさすら覚えます。党内にはそういうあなたを煙たがる空気もありましたが、この潔癖さこそが今の政治に最も大切なことだと思います。」と弔辞を読んでいます。
1994年は、日本の価値観の変化点でした。しかし、もう一度、倫理を取り戻さないと、国際的に孤立の道を突き進んでいるように思われます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E6%9D%B1%E6%AD%A3%E7%BE%A9
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E4%B8%89%E9%99%B8%E5%9C%B0%E9%9C%87
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BF%E5%9E%A3%E9%80%80%E5%8A%A9
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1896_meiji_sanriku_jishintsunami/
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第4章 行政の応急対応