東日本大震災津波の技術的な思い出(1)

はじめに

3月11日には、東日本大震災から10年がたちます。筆者は、2000年から2014 年頃の10年間余り、本来の専門ではありませんが、海岸工学の研究に携わっていたことがあります。その間、インド洋大津波東日本大震災津波の2つの大きな津波が起こり、被災の現場を調査しました。インド洋大津波は、なにぶん海外のことで、また、被害範囲も広大でしたので、南部タイのプーケット島とその周辺を調査しただけですが、津波被害とはどんなものであるか、どんな調査が可能かが理解できました。その経験は、東日本大震災津波の調査に役立ったと思っています。

2011年の被災のあとには、日本中の海岸工学の専門家が被災調査を行いましたので、浅学の筆者がいうことは何もないと思っていました。しかし、10年経つと、被災調査を行った大家の中にも、既に、鬼籍に入られたかたもいらっしやいます。また、津波被災に関する本も多数出版されていますが、技術的な側面を扱ったものは少ないです。研究者は、論文を書くことが仕事ですが、津波の調査、特に、調査結果をその場で復興につなげる技術的なノウハウには、断片的な知識が多く、論文という形式にはなじまないので、散逸していると思います。

筆者も、数年前に、大病を経験して、いつ鬼籍に入っても、不思議ではない年齢になりました。10年後には、このように文章を書いていられるかわかりません。このままでは、頭の中にある津波に関する技術的なノウハウはなくなると思われます。そこで、技術的な思い出として、頭の中に残っている記憶を断片的ですが、文字に起こしてみたいと思います。