吐玉泉とチームラボ偕楽園（水戸市）～つくば市とその周辺の風景写真案内（３３９）

吐玉泉とチームラボ偕楽園（水戸市）

「吐玉泉」は偕楽園本園の中にある湧き水です。

前回、紹介したように、パンフレット「偕楽園公園ガイド」には斉昭公が偕楽園本園につくった「吐玉泉」について、次のように書かれています。

この辺りは昔から湧水の多かったところで、徳川斉昭公は、偕楽園造成に当たり地形の高低差を利用して集水し、造園上の景観を考慮した白色の井筒を据えた湧水泉を設置しました。この水は眼病に効くといわれ、好文亭の茶室何陋庵の茶の湯にも供されました。泉石は常陸太田市真弓山の大理石で、寒水石ともいいます。現在の泉石は4代目で、昭和62年（1987年）に更新したものです。

つまり、「造園上の景観を考慮した白色の井筒を据えた湧水泉」が何かが、景観上のポイントになります。

常磐公園攬勝図誌によって作成した図１で、「吐玉泉」のサイズを説明します。泉のそばに、大人が体を傾けて、泉を覗き込むように立っています。泉は筒状のものから周囲にあふれ出しています。パンフレットの説明の「白色の井筒」とは何かを考えます。井戸（wiki）には、「かつて井戸底部には底を抜いた状態の桶が埋められていた」とあり、「底を抜いた状態の桶」のような構造物を「井筒」というようです。つまり、「吐玉泉」は地上から湧き出した泉に、「井筒」をかぶせて、地上１mくらいのところで、桶の縁から水があふれ出る構造になっていたと推定されます。そう考えると、常磐公園攬勝図誌の「吐玉泉」の図に納得がいきます。関心のある方は、国立国会図書館デジタルコレクションの24ページに図があるので、ご確認ください。

写真１は、現在の「吐玉泉」です。常磐公園攬勝図誌の「吐玉泉」に比べると井筒の高さは低く、直径はより大きくなっています。泉の水量は、常磐公園攬勝図誌の10分の1以下と思われます。この形状の変化は、「吐玉泉」の周辺の宅地開発により、水田が減少して、地下水が枯渇したので、「井筒」を上げ底にして、ごまかすための工夫と思われます。つまり、「吐玉泉」にも、「玉龍泉」と同じ水源枯渇問題があると推測できます。実際、「吐玉泉」を見ても、水がほとんど流れていないので、泉としての印象は希薄です。

写真１の右上に、チームラボ偕楽園のライトが見えます。

写真２は、吐玉泉とその周辺です。右側に、チームラボ偕楽園のライトが見えます。写真の左側に太郎杉があります。

写真３は、チームラボ偕楽園がライトアップした吐玉泉です。これは、かなり露光を上げた写真です。吐玉泉の水の吹き出し口が中央にあり、そこを中心に年輪のような白い光の輪が、周辺にゆっくり移動しています。しかし、静止した写真では、わかりにくいです。

写真４は、チームラボ偕楽園がライトアップした太郎杉とその周辺です。吐玉泉は写真４の左に位置します。写真４からわかるように、多くの人の目は、カラーのライトが移動する太郎杉の方に向いています。ライトの明るさ、動き、色は、吐玉泉よりは太郎杉の方が大きいからでしょう。常磐公園攬勝図誌の時のように、吐玉泉の水量が多ければ、チームラボ偕楽園も、ナイトチボリとよばれるコペンハーゲンのチボリ公園の噴水のライトアップのような演出もできたと思われます。しかし、現在の水量では、吐玉泉のライトアップは、実際には、泉ではなく、大理石の井筒のライトアップにならざるを得なかったため、これが演出の限界であったと思います。吐玉泉は、井筒だけでなく、水量も修復して欲しかったと思います。