BokehとBlur
ボケ(Bokeh)は、日本語由来の英語です。ただし、写真を撮影すれば、焦点の合わない部分は出てくるので、それを英語では、Blurといいます。なので、Bokeh(a Japanese word of 'blur')と表記されていることもあります。BokehとBlurは光学的にはおなじものです。違いは、Bokehは焦点ずれを表現として積極的に用いるのに対して、Blurは、必要悪のようなイメージだという点です。
整理しておきますと、次になります。
Bokeh:表現の一部として積極的に起こした焦点ずれ
Blur:光学的に発生する焦点ずれ。あるいは、Bokehを除いた意図しない焦点ずれ。
さて、梅を撮る場合には、Bokehは好ましいのですが、意図しないBlurは避けたいです。つまり、ある範囲は、焦点があっていて、その範囲外は、焦点がずれている写真が望ましいわけです。ところで、実際に、梅林の中で、梅を撮影してみると、意図しないBlurだらけで、泣きたくなります。筆者が使っているカメラのセンサーは、今のところは、APS-Cが最大なので、これでも、フルサイズカメラよりは、意図しないBlurの発生確率は低いはずです。それでも、適当に撮影すると半分以上が、意図しないBlurのためにアウトになります。梅の花の向きは、360度x3で、どの向きもありです。花の位置は、枝の配置に従って、3次元空間に点在しています。花、2,3個までなら、なんとか、Blurの制御ができますが、10個ぐらいを超えると、ほぼ、Blurは制御できません。
さしあたりは、F8まで絞って、撮影しています。しかし、F8でも画角が望遠側になると、Blurが多発します。そこで、発想を変えて、Blurの出ないコンデジの方が、撮影しやすいのではないかと考えました。コンデジは、Blurが出にくいですから、Blurの出やすいAPS-Cのカメラより、撮影の自由度が高いのではないかと考えました。以下は、そのテストの結果です。
テストの趣旨は、「大型センサーカメラはBlurが出やすいので、撮影の自由度が制限されている。コンデジならば、Blurの心配が少ないので、より自由な構図がとれるだろう。」という仮説の検証です。このために、あえて、Blurの出やすい近景、中景、遠景を含む構図を選びます。
写真1、2、3は、APS-CのカメラK-5で撮影した画像です。遠景の雲と、中景の梅の木のBlurの違いを見ます。この3枚からは、F22まで絞らないと、中景と遠景に、Blurが出ます。
写真4は、1.7型センサーのコンデジP-330で撮影したものです。この場合には、F8でBlur発生の問題はありません。
コンデジの一番大きなF値は、1.7型センサーのP-330で、F8、1インチセンサーのDSC-RX100で、F11、m43センサーのLX-100で、F16です。これが何を意味しているかというと、1.7型センサーであれば、F8まで絞ると、ほぼパンフォーカスになるので、それ以上の絞りは不要であると、判断したと思われます。つまり、カメラについている絞り値の最大の値は、そのセンサーサイズで、ほぼ、パンフォーカスになる絞り値を表していると思われます。
実は、今回の写真を撮るまで、APS-CのカメラでF22を使ったことはありませんでした。最近のRAW現像ソフトは、回析補正もできます。darktableは、よくわからないのですが、ニコンのCapture NX-Dには、回析補正という選択肢があります。回析補正ができるのであれば、回析による画像劣化のあるF22も使っても大丈夫とは思います。しかし、いつも、絞り優先で、F22で撮影するのが好きだというカメラマンは、まれだと思います。これに対して、コンデジのF8は、しばしば使う絞り値です。
比較の結果を比べれば、流石に、APS-Cのカメラで撮影できないが、コンデジ撮影できるという条件はなさそうです。しかし、F値を気にしないで、意図しないBlurが出にくいというコンデジの長所は、写真1から4のような構図の場合には、あると考えます。
写真1から4は、Blurの比較のために、darktableで読み込んだままで、処理をしていませんので、処理後の画像を、写真5と6に載せておきます。