Society5.0に向けた概念図

今回は、社会システム交代を概念図で考えてみます。

Society XXという世代のナンバリングのルールはよくわからないので、適当に、4.0から、5.0としておきます。これは、nとn+1であれば、nの値にはこだわりませんが、流石に、Society n+1と書くわけにもいかないという意味です。図で考えるという手法は、パールの推奨する方法で、確かに試してみると、言葉や文字では、単純化しすぎる問題点があることに気付きます。おそらく、人間の頭は、文字にすると複雑なことが考えられないので、無理に単純化するのだと思います。当たり前ですが、図で書くと、突っ込みどころは、満載になります。ただし、図は、考えるヒントですから、否定しても意味はありません。図に対する対処は、改善して、利用価値があるのであれば、自分流にアレンジしてつかう、使い物にならないと思えば、無視するのいずれかになると思います。これは、当たり前ですが、学会のレビュー方式では、全滅するスタンスです。

前書きはこのくらいで、図の説明をします。

図1は、社会システムの交代のイメージです。この図の言わんとするところは次の2点です。

  • この図のイメージが正しければ、過去の実績を分析して対策を立てる帰納的な手法は全敗すると思われます。

  • この図のイメージが正しければ、正規分布(1つ山分布で代表値は平均値)に基づく、議論は、的外れになります。

以上を、前提に、Society4.0とSociety5.0の違いを図2に書いてみました。状況が複雑なので、常套手段である時間軸と空間軸で考えています。ただし、その区分は、物理的なものではなく、かなりあいまいです。たとえば、大きな企業は、オフィス、工場などの空間スペースが広いだけではなく、働いている人も多いですが、人が多いことも、空間が大きいとイメージしています。また、人が多いと、コミュニケーションの量が多くなることも、空間が大きいとイメージしています。図で書くと、このようにあいまいになりますが、複数の属性(アトリビュート)を同時に取り扱うことができます。会社をオブジェクトとして、考えるとわかりやすいかもしれませんが、今回は、図式解法なので、オブジェクトには、深入りしないことにします。

図3は、規模の経済効果を表しています。左は、規模の経済の効果のある場合です。ここでは、規模の経済を、単純な生産性と調整コストに分解しています。大きな組織で、会議をたくさん開いている場合には、マイナスの調整コストが大きくなります。右側は、規模の経済の効果がなくなった場合です。一般には、最近は、規模の経済が効かくなったと説明してすましています。しかし、例えば、コーディングの世界であれば、現在のオブジェクト指向言語で、ライブラリーを活用すれば、昔、COBOLでプログラムを書いていたころの100倍くらいの生産性があります。つまり、昔は、100人のプログラマが必要だった仕事を、現在では1人でできます。今後も、まだ、IT分野では、生産性を向上させる余地がありますから、同様に、規模の経済効果は減ります。また、大量生産は、ダイレクトメールと同じで、消費者が何を欲しがっているのかを正確に把握せずに生産します。これを、今後、受注生産に切りかえれば、無駄がなくなり、生産性があがります。現在でも、パソコンや自動車は、発注後、部品を組みたて製品を作って出荷していますので、拡大は可能です。さて、話を図に戻すと、単純生産性に規模の経済が働かなくなると、調整コストの大きな組織の総合生産性は、小規模の組織の総合生産性に劣ります。

図3の蛇足ですが、現政権のブレーンであるアトキンソン氏は、「日本が貧しくなる原因は中小企業の生産性が悪い点にある。最低賃金を引きあげて、中小企業を大企業に組み替えれば、日本は豊かになれる」といっています。しかし、次の点で、無理があるように思われます。

  • 過去のデータに基づく分析は、Society4.0の企業には当てはまりますが、Society5.0の企業にはあてはまりません。

  • 賃金は企業活動の結果であって、原因ではありません。

最後に、図2に図1と図3を組み合わせた、図4を示します。これは、図2を少し、修正しただけです。図2では、Societyの世代交代が起こるドライビングフォースを示していませんでした。図4では、これは、生産性であると考えて、斜めに、生産性軸を追加しています。つまり、Societyの交代は、生産性をドライビングフォースとして起こると考えます。

もちろん、政治的に活動して、生産性の向上に反対し既得利権を維持する活動は可能ですが、日本は鎖国をしている訳ではないので、そうした戦術は中長期的な戦略としては破綻します。現在の株価はバブルで、もうすぐはじけると思われますが、こうした場合には、逃げ切り戦術が取れれば利益が生じます。同様に、生産性の向上に反対して、特定の個人が逃げ切り戦術をとることは可能です。ただし、そうした戦術を許容することは社会的公平の面で大きな問題を生じます。つまり、正直者は馬鹿を見る社会を作ると、誰も努力しなくなります。こうした社会の不公平さの認識は、生産性の向上を阻害し、社会を貧しくしてしまいます。図4では、そうした状況は配慮していませんが、この問題は、世界的な政治的課題のように思われます。つまり、困難ですが、「Society5.0を阻害する要因を排除する政治的な手法」を考えなければなりません。解決策は、今の筆者には、わかりませんが、日本については、日本を脱出するピルグリム・ファーザーズのような方法になってしまう可能性もあります。

まとめ

Society5.0の現状認識としては、図4は、ある程度、問題分析に使えると思います。ただし、生産性向上の阻害要因を排除するためには、別の分析が必要です。なお、図4には、データサイエンス的に見た分散の違いも入れてあります。図4は、なんとなく、主成分分析っぽいです。

 

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図1 社会システム交代のイメージ(数字は西暦;縦軸は組織数;横軸は生産性)

 

 

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図2 社会システムの構成要素

 

 

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図3 規模と生産性の関係

 

 

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図4 社会システムの構成要素と生産性の関係