極上の焼き芋の焼き方(69)

焼き芋羊羹と焼き芋の話(1)

  • アルミホイルの効果

前回、申し上げましたように、1月以降の焼き芋では、水分の飛んでいるリスクのあるSサイズよりも、MかLサイズのサツマイモを使った方が、良い焼き芋を焼くには、安全な選択になります。

そうしますと今まで、Sサイズの焼き芋で扱っていたキャセロールを使った焼き芋はできなくなります。キャセロースのサイズがあまり大きくないので、Mサイズのサツマイモははいらないのです。

そこで、キャセロールの代わりに、アルミホイルで、サツマイモを包むことにしました。

  1. サツマイモにアルミホイルができるだけ二重にならないように、注意してまく。

  2. サツマイモにアルミホイルが二重になってもよいので、適当にまく。

  3. アルミホイルで袋を作って、その中にサツマイモを入れて焼く。

現在は、以上の方法に、大差はないと考えていて、一番簡単な2.を使っています。

キャセロールと比べると、次の長所と短所があります。

  • サツマイモのサイズに自由に対応できる。

  • アルミホイルで包んであるので、糖蜜が出ても、取り扱いが容易。

  • 糖蜜が出てしまうと、アルミホイルは使い捨てになってしまう。

焼き芋にアルミホイルを使うと書いたレシピは多いですが、その理由は明示されていません。

オーブンの対流による熱伝達がいったん、アルミホイルで遮断されます。その後は、放射熱になるのか、伝導熱になるのかわかりません。料理の研究家や、焼き芋の研究者は、アルミホイル焼き芋の熱伝達の方程式をたてて解いていません。つまり、焼き芋加熱の物理過程は、未解明です。

ともあれ、アルミホイルの巻き方3種に差がないと判断している理由は、キャセロールと同じように、アルミホイルに水分を保持する効果を期待しているからです。このためには、サツマイモがアルミホイルから、飛び出して、そこから水分が飛ばないようにしなければなりません。つまり、アルミホイルは、サツマイモから水分が逃げださないように、サツマイモ全体を覆うことが必要です。

サツマイモをアルミホイルで覆って水分を保持することには次の2つの効果があります。

  1. 水蒸気が閉じ込められ、水分が保持されるため、加熱時間を延長できる

  2. 水蒸気が閉じ込められ、水分が保持されるため、サツマイモの温度は100度を超えない。

補足します。

洗ったままのサツマイモを加熱すると、水分が失われます。オーブントースターでは、ヒーターの放射熱が直接サツマイモを加熱します。これに対して、電子レンジについているオーブンは、直火のヒーターがなく、熱風で、食品を加熱します。したがって、失われる水分量は、オーブントースターより多くなると思われます。筆者の手もとの調理器は、オーブンレンジ(オーブン付き電子レンジ)で、後者のタイプです。この場合、Mサイズ(200g)のサツマイモで加熱可能な最長時間は90分です。これを過ぎると乾燥しすぎて硬くなってしまいます。一方、アルミホイルで巻いた場合には、この制限はありません。今のところ、最長3時間までしか試していませんが、類推すれば、6時間くらいまでは大丈夫そうです。ただし、温度設定によって異なりますが、オーブンによって、安全な連続最長加熱時間が設定されていますので、それを守る必要があります。実際問題としては、後で説明する方法で、加熱と保温を組み合わせた方が、電気代が安くなりますので、連続して、長時間加熱し続けることはないと思われます。

むき出しのサツマイモを焼いて、取り出してすぐに、放射温度計で計測するとサツマイモの皮の部分の温度が110度を超えることがあります。つまり、この部分では、水の蒸発が起こっていません。サツマイモの身の表面の温度は計測していませんが、身の中の温度は一番高くなっても97~98度です。これは、サツマイモに水分が含まれているためです。つまり、水蒸気の蒸発がある限りは、サツマイモの温度は100度を超えることはありません。このことは、レシピに書いてある加熱温度何度という違いは、サツマイモの温度の違いではなく、サツマイモの中の温度勾配にしか関係していないことになります。これも、正確なことは不明ですが、サツマイモは空気を含んでいて、熱伝導は悪いようです。過去の温度グラフをみれば、サツマイモの皮付近の温度が100度くらいになった場合に、この温度がサツマイモの芯に到達するまでも時間遅れは30分を越えないと考えています。(注1)以上を考えると、アルミホイルで包んだ場合には、オーブンの設定温度の違いは、加熱始めのサツマイモの中の温度勾配の違いだけで、サツマイモの温度そのものは、ほとんど差がないと思われます。

というわけで、アルミホイルを使って、温度はあまり気にせずに、長時間加熱する方法を検討しています。

長くなったので、事例は次回に説明します。

注1:

糖化と温度の問題は次の2点に集約出来ます。前提として、一度、100度近くなって、糊化が終わっているものとします。

  1. 最大の反応を起こす温度は何度か

  2. 一旦、100度に加熱することで、酵素の糖化能力は失われるか

今のところ、これらの問題に解答はありません。公開された実験結果は、in vivoで、in situではないので、使えません。

筆者の予想は以下です。

  1. 最大の反応を起こす温度は90度前後

  2. 一旦、100度に加熱しても、酵素の糖化能力は失われない

 

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