企業でも行政でも、ある施策を良かれと思って推進します。しかし、世の中、やる前から、成功が決まっているような施策は存在しません。
したがって、施策をおこなった結果には、次の2つのケースが起こります。
-
期待するような良い結果が得られた(効果があった)場合
-
期待するような良い結果が得られなかった(効果がなかった)場合
もちろん、この判定ができるためには、事前に判定基準を決めておくことが必要です。
なお、行政施策の一部では無謬性を担保するために、結果がどうなろうと、期待するような良い結果が得られたと無理やり事後評価する場合や、結果がわかりきっていて、実施するまでもない(実施する必要性のない)施策をあえて行うことがありますが、今回は、そのような場合は、除いて、考えることにします。
さて、1.の結果が出た場合には、問題はないと思います。1.の効果があった施策が、継続して、実施されることになります。
問題は、2.の場合です。2.の場合の対応は、更に、2つにわけることができます。
2-1.施策を、そのまま、一部変更または、改善して継続する。
2-2.施策を中止する。(中断を踏む)
いったん、中断して、様子をみる場合は、ここでは、中止に含めることにします。つまり、中止したあとで、再開するか否かは、次のステップの判断と考えて、ここでは、区別しないことにします。
さて、最大の課題は、2-1.と2-2.の判定基準です。
筆者は、そこで有効な基準は、試行錯誤の公理であると思います。
試行錯誤の公理:ある施策を実施して、一定期間を過ぎても効果が見られない場合には、施策を中止する。
というものです。
これは、あたりまえで言うまでもないことだと思われますので、ここでは、公理という名前を付けています。
行政施策で行われる時の評価は、事業進捗が停止している事業をチェックして、中止するか否かを判断するものです。それよりは、試行錯誤の公理の方が合理的な判断基準と考えています。
試行錯誤の公理で問題になる点は、一定期間の大きさのとり方です。最短では、施策に効果がある場合には、効果が出て計測できるまでの時間より長い必要があります。また、最長は、政策を実施するに値すると考えた社会経済条件が変化しない範囲、または、計画当初に考えた施策に投入でき、失敗しても耐えられるリソースを使い果たす前になります。前者は、社会経済状況の変化を観測して判断します。後者は、計画立案時に、配分できるリソースの上限を設定する方法が一般的です。これらを勘案すると、多くの場合には、2から10年程度と思われます。特に、最近のように、技術革新が速い場合には、10年は長すぎるので、2から5年と思われます。
試行錯誤の公理の利用状況
施策の中身はほとんど変わらないで、名称を変えるラベルの張替えが、中身を変えない施策の延命手段として多用されていますが、ラベルの張替えは、以下では、同じ施策とみなすことにします。
試行錯誤の公理の利用状況を考えます。
アマゾンの場合には、多数の新規事業を立ち上げては、3年程度で撤退する事業が多くあります。これは、試行錯誤の公理を原則通り使っている事例と言えます。
パナソニックが太陽光発電パネルから撤退するようですが、これは、補助金の変化による社会経済の情勢の変化に対応するためのようです。急激な、社会情勢変化が、引き金になっています。社会情勢の変化で言えば、コロナで、売り上げがおちた業界はとりあえず、人員削減でしのいでいますが、今後の方向の見定めによって、撤退を明確にするところが出てくると思われます。
オリンパスのカメラ部門は、ほぼ10年続いた赤字の結果、カメラ部門を切り離しました。この場合の10年は、長すぎたと判断されるのではないでしょうか。親会社の中で改革するのと、切り離されて身軽になって改革するのと、どちらが有利かは一概にはいえないと思われます。
恐らく、試行錯誤の公理の利用で、問題になるのは、公共部門と思われます。地方再生など、10年以上行って成果のほとんど上がらない施策が山のようにあります。民間会社であれば、とっくに倒産していると思われます。
以上のように、試行錯誤の公理は、施策の評価が正常に行われているのかを判断するために、ほどほど使える基準ではないかと思います。