COCOAと公共の情報化(2)

今回は、「2.新しい世代は、新しいパラダイムをどこで仕入れるのか。」を考えます。

通常は次の2ルートが想定出来ます。

  • 公式ルート(大学のカリキュラム、学会活動)

  • 非公式ルート(知人・友人ルート、インターネット)

公式ルート

パラダイムシフトが起こる場合には、公式ルートは、機能不全になります。例えば、大学の情報科学学科だけでなく、全ての学科で教えている情報関係のカリキュラムは、一部公開されているPDFなどで、およその内容を推測することができます。これは、バイアスのあるサンプル調査になりますが、PDFを公開している講義が、公開していない講義より、若干最新の内容を取り入れている可能性はありますが、逆は、考えにくいので、進歩を若干大きめに見積る側のバイアスと推定されます。ですから、バイアスなしと考えても、パラダイム切り替えの対応状況を過大に推定することはないでしょう。

実際に、サンプル調査をするとオブジェクト指向で、カリキュラムが書かれている割合は、約半分です。オブジェクト指向は、万能ではなく、数値計算のように事前に配列を切った方が、効率的で、バグも出にくい分野もあります、関数プログラミングが有効な分野では特に傾向が強くなります。とはいえ、前処理や、後処理では、オブジェクト指向が有効な場合も多いので、ある程度は配慮すべきと思われますが、配慮されていない場合も多いです。オブジェクト指向に限りませんが、大学のカリキュラムは、おおむね、古いパラダイムを引きずっています。そして、学生による授業評価が、追い打ちをかけます。大学の講義を、公式を覚えて、使う方法を教わる場だと考えている学生も多いです。また、教材を毎年、最新に更新すれば、半分以上は英語の教材になりますが、これが受け付けられないことも多いです。ですから、単に教員の怠慢が原因ではなくても、新しいパラダイムの内容にはなりにくいです。文部科学省も、1年前に、カリキュラムを提出して、その通りに授業をすることを求めます。カリキュラムの文言をチェックして、それで、審査したことにしています。一方では、アウトカムズ評価は行いません。これは、大学だけの問題でなく、義務教育から始まる全ての学校に共通します。その結果、どこかで、ドロップアウトして、分数のできない大学生が多数生産されています。(注1)

非公式ルート

かつての学校の大きな効果は、知人・友人ルートとの情報交換でした。現在は、インターネットを通じて、それに代わる情報が入手できます。ただし、多くの場合は英語です。このブログで、紹介しているRAW現像ソフトのdarktableは、現在は、開発部隊の中心がフランスにあるので、一番早い情報はフランス語です。

政府は、児童1人に1台のパソコンを手配する予算が過大であると考えていますが、基本は、インターネットがつながればよいので、ノートパソコンであればよいですが、より安価なクロームブックでもほぼ問題ありません。そのコストは、授業料を払って、学校にいって、知人・友人ルートから情報を得るのと比べれば劇的に安価です。つまり、費用対効果を考えれば、PC(ノートパソコンまたは、クロームブック)を購入しないという選択は考えられません。しかしながら、実際には、スマホは持っているが、PCを持っていない大学生が多数います。このことを説明できる仮説は、大学生の多くは、古いエコシステムで、収入を得ることができると考えているというものです。

問題点の整理

「2.新しい世代は、新しいパラダイムをどこで仕入れるのか。」の答えは、非公式ルートです。スマホも緊急避難的には使えますが、効率を考えれば、PCかタブレットが必須です。キーボード入力を考えれば、タブレットにキーボードが必須になるので、タブレットも広い意味ではPCと見なせます。あとは、プラス英語が必須です。

PCを購入しない理由は、PCやプログラミングができることが、収入に結び付くと認知されていないためです。

そこで、次回には、PCやプログラミングができることに、どのようなメリットがあると認知されているかを考えます。

 

注1:

もう、お気づきと思いますが、これは、COCOAのバグと共通しています。コロナ追跡のできないCOCOAと分数のできない大学生の間には、組織マネジメントの共通点があります。

なお、大学のカリキュラムや、非効率な講義形式のエコシステムをどのように変えるべきかは、大きな課題ですが、ここでは、触れません。ただし、エコシステムの切り替えなので、今行われているような漸近的な改良で解決できる問題ではない点だけは指摘しておきます。