デジタルカメラの不都合な真実(4)

レンズマウントをつくる話

このシリーズでは、センサーサイズとレンズとカメラの性能の関係を論じています。手元の古いカメラで撮影した画像を並べて、考察しているわけですが、カメラメーカーは、競合各社の機材を購入して常に比較している訳ですから、センサーサイズとレンズとカメラ性能の関係は、熟知しているはずです。しかし、不必要な情報を流して、売り上げを落とすより、マーケットの獲得を優先しているということだと思います。日本の組織にありがちな短期的には最適な戦術をとっている訳ですが、長期的には、正しい戦略とはならないことが、現在のデジタルカメラの現状をまねいています。

このブログで取り上げている計算論的思考をすれば、マイクロソフトwindowsが出てくるまでは、コンピュータには、互換性がなく、他社の機材は接続出来ませんでした。しかし、規格を統一し、仕様を公開することで、サイドパーティの機材が接続可能になり、量産効果によって、価格が下がり、普及が広がります。Unixは、Linuxが出て、普及が広がります。スマホのOSは2種類だけで、USBなどのインターフェースや、ソフトウェア開発環境は公開されています。

こうした流れで見れば、デジタル機器は、規格を統一して、仕様を公開することで、普及がはかれて生き残りが可能になるのが流れです。デジタルカメラでは、m43、ソニーのEマウント、ライカのLマウントが仕様が公開され、富士のXマウントについても、最近は、情報が公開されているらしいです。EマウントとLマウントは、フルサイズセンサーのカメラが出ていますが、もともとは、APS-C用の規格であったようです。

さて、カメラメーカーが、「センサーサイズとレンズとカメラ性能の関係は、熟知している」として、以下では、レンズマウントをつくる歴史のifを考えてみます。

2008年8月に、m43の規格がでます。これは、43の規格が大きすぎて、APS-Cと競争できないので、ミラーレスとして生き残りをかけます。m43の出現は、それなりのインパクトがあり、まず、2008年12月から、ソニーは、ミラーレスのよりコンパクトな、マウントの設計を開始し、2010年年6月にEマウントのカメラを発売します。ソニーは、その前に、2010年2月21日にカリフォルニア州アナハイムで開催されたPMA 2010にてEマウントを発表しています。ですから、m43とソニー以外のカメラメーカーは2010年頃に、ミラーレスのマウント規格をどうするのかという課題を抱えることになります。ソニーが、m43でなく、Eマウントを採用したのは、それまでのミラー付きのAマウントのレンズを利用できるようにするためです。この点から、考えるとm43規格を作るときに、APS-C以上にも使えるような上位互換性を付与した規格になっていれば、現状とは違った展開になったでしょう。おそらく、このころは、ミラーレス規格をつくるとき、自社のミラー付きカメラのレンズが使えることしか頭になかったと思われます。ここで、上位互換性というのは、マウント系を1種類にすることではなく、マントアダプターを使えば、APS-C、フルサイズ、中判センサーのカメラで、m43のレンズが、電子制御できればよいわけです。そのためのフラシュバックの調整、電気信号の規約などの調整をすることになります。

さて、ソニーのEマウントの出現をうけて、各社が何を考えたかを推定してみます。

最初にニコンは1型のニコン1マウントのミラーレスカメラを投入してきます。1型は、m43の半部の面積しかありません。このとき、恐らくニコンは、m43ミラーレスカメラへの参入も比較検討していたはずです。おそらく、歴史のifで考えれば、ニコンが、m43に参入しなかったことが、デジタルカメラの歴史を左右する分岐点であったと思います。カメラメーカーのなかで、ニコンとキャノンはミラー付きカメラの時代には、超過利潤がありました。このため、今までは、この2社は、基本点には、超過利潤を温存する戦略をとっています。ニコンが、m43に参入した場合には、規格が統一されているので、超過利潤は発生しません。おそらく、ニコンは、その点を嫌ったのだと思います。カメラの性能には、次の要素があります。

  1. センサーの性能

  2. レンズの性能

  3. 自動焦点などのカメラ制御性能(移動物体対応)

  4. カメラの大きさ重さ

今回は、1.と2.を、主に論じていますが、実は、デジタルカメラになって、3.4.の進歩が一番大きいです。ニコンは、ニコン1で、3.で、勝負できるとして、m43をさけたと考えています。2012年6月にソニーRX100(1型)コンデジが発売になり、結局、ニコン1は敗退します。それは、1.2.4.があまりにお粗末だったからです。しかし、1型に勝負をかけたことは、ニコンが、カメラの性能は、センサーサイズではないことを熟知していたことを示しています。なお、WEBなどでは、1.を中心に、ニコン1たたきが行われました。それが敗退の原因になったかもしれませんが、筆者がニコン1を使うのをやめた理由は、レンズがないため明るい所でも写りがよくないことと、センサーサイズに比べ、カメラがあまりに大きいことです。

フジフィルムは、ミラー付きカメラのマウント持っていませんでしたので、自由に新しいマウントを選べる位置にいました。逆に、言えば古いマウントの資産はなかったです。S100FSを作っているフジフィルムですから、ダイナミックレンジが狭い場合には、カメラの性能は、センサーよりレンズで決まることは熟知していたと思われます。したがって、2010年頃のXマウントを出す前には、m43の参入も比較検討していたはずです。主な選択肢は、m43で競争する、APS-Cで競争することの2つだったと考えています。APS-Cの2大メーカーである、ニコンとキャノンを検討した結果、この2社は、レンズ開発のリソースがフルサイズにシフトしていて、APS-Cのレンズ性能が良くないので、そこに勝機があると判断したと思われます。出始めの頃のXマウントのカメラは、3.4.が悲惨な状態だったので、1.2.をセールスポイントにおいたわけで、それなりのシェアがありますから、作戦は成功したと言えます。フジフィルムが、m43に参入した場合には、競争が激しく、利益率が下がっていたと思われます。特に、手振れ、カメラの大きさ、自動焦点で競争が厳しかったと思われます。

キャノンは、最後に出てきて、まったく異なった戦略をとります。それは、マーケット重視の戦略で、ブランドイメージを重視する戦略です。EF-Mマウントのカメラは、位相差の焦点が使えるようになった、Kiss Mからは自動焦点が合わない問題が解消されましたが、それまでは自動焦点に問題がありました。EF-Mマウントは、アマチュア向けの仕様を徹底して、それなりの売りあげがありますから、ビジネスとしては、成功していると思われます。アマチュアは交換レンズをあまり買いませんので、レンズの種類は少なく、性能も普通です。価格も安めに設定しています。しかし、レンズの作りはしっかりしていて、筒はプラスチックではありません。これは、アマチュアカメラのどこを重視するかに合わせたビジネス戦略です。簡単に言えば、カメラは見た印象がよく、触ってしっかりした作りで、どんなシーンでも80点で写るが、それ以上には映らない仕様です。利用者の8割はオートモードで撮影することを前提にしていると思います。ただし、このビジネスモデルがスマホに勝てるかは、今後の課題と思われます。

 

  • 2008年8月5日 m43

  • 2010年年6月3日 ソニーEマウント(APS-C

  • 2011年10月20日 ニコン1マウント(1型)

  • 2012年2月18日 フジフィルムXマウント(APS-C

  • 2012年6月15日 ソニーRX100(1型)コンデジ

  • 2012年9月29日 キャノンEF-Mマウント(APS-C