東京都の感染者数の何をみるべきか~コロナウィルスのデータサイエンス(168)

データの見方

「東京都の感染者数が、12月23日に748人になり、1日の発表人数としては、今月17日の821人に次いで、これまでで2番目に多くなりました。」

マスコミの報道は、基本的にこんな感じで、オリンピックの記録更新と同じスタンスです。12月21日(月)の感染者数392人も月曜日としては、過去最多でしたが、大見出しの記事にはなりません。スポーツの記録ではないので「これまでで2番目に多い」こと自体に意味はありません。

図1は、「コロナウィルスのデータサイエンス(168)」で掲載したグラフの一部です。ただし、感染者数のデータだけは、12月23日の748人までを使っています。7日移動平均で見る限り、ここ1週間のトレンドはほぼ一定です、その前も12月10日頃までは、大きな変化はありません。

図2は、12月1日からの東京都の7日移動平均の感染者数です。図1の一部拡大になります。12月11日ころから、感染者数(person)の増率に変化がみられ、12月11日以降は23日まで、増加率(グラフの傾き)に大きな変化は見られません。そこで、12月11日から23日の平均増加率を求め、12月24日以降2週間分の推定値(e_person)を作成しています。この推定では、1月6日に800人を超えます。

図1に紺色の補助線を入れてあるのが、図2のオレンジ色の推定値に相当します。図1の赤い補助線では、1月6日のGoogleの12月16日版の推定値を読んでいます。この推定値は、12月16日版で最新ではありません。この推定値による1月6日の予想感染者数は7日移動平均で約760人です。

7日移動平均の感染者数と実際の感染者数の偏差量を12月1日から23日まで、23個求めて、ベクトルs3に収納しました。

図3は、s3のヒストグラムです。統計量は図4のようになっていて、平均がー17.19、標準偏差σが、128.614です。図3に見るように、ヒストグラム正規分布のベルカーブにはなっていません。しかし、便宜上、σで話を進めます。

また、最大値が223.43 、最小値が、-256.14ですから、データ数が少ない(23個)こともありますが、全データが、ほぼ2σの間に入っています。仮に感染者数を切りのいい800人とすると変動幅は次になります。

σの場合: 671から929人

2σの場合: 542人から1057人

この程度の感染者数が正月明けには予想されるわけです。

緊急事態宣言(行動抑制)が出される場合、そこで、増加率の減少が期待されるわけですが、医療機関にとっては、少ない患者数の時に、発令してもらった方が、負荷は小さくなります。また、感染者数が減少に転じても、感染者数がある数以下になるまでは、緊急事態宣言(行動抑制)は継続されるものと思います。簡単に言いますと、感染者数が少ない時に、緊急事態宣言(行動抑制)を出した方が継続時間が短くて済みます。つまり、宿泊業や飲食店に与えるダメージは小さくなります。これは、純粋に微分法方程式の解の特性の問題です。

条件を変えて、微分方程式を解けば、どの時期にどの条件で、緊急事態宣言を出すことが、医療機関と宿泊業や飲食店に与えるダメージが最小になるかがわかります。このような試算がなされていれば、事前に、緊急事態宣言を出す、最適な条件がわかっているはずです。

実は、こうした解答を出すには、データがあれば、微分法手式とモンテカルロシミュレーションを組み合わせれば簡単にできます。AIもいらない修士課程レベルの簡単な課題です。こうした計算は、温暖化のシミュレーションや、富岳を使ったマスクのシミュレーションの1/100以下の計算量の課題です。2050年対策の温暖化の問題を1週間中断して、非常事態宣言のシミュレーションに協力して欲しいと呼びかければ、ボランティアで賛同してくれる温暖化の研究者もいると思います。

まとめますと、感染者数のチェックは、緊急事態宣言まで、どの程度余裕があるのかという視点でなされるべきです。

非常事態宣言の時期

非常事態宣言は、春のように一律に行っても意味がありませんし、その必要もありません。おそらく、春の非常事態宣言は、オリンピックの開催を危ぶむことが背景にあったと思われます。

今回の感染拡大も、非常事態宣言を出すのであれば、後になるほど、ダメージにが大きくなりますから、既に、期間とエリアを限定して、非常事態宣言が実施されていることが合理的です。こうした合理的な判断がなされない理由には、非常事態宣言を出した時点で、来年度のオリンピックがなくなるという判断が働いていると思われます。

2021年2月28日から3月7日まで予定されていた「2020釜山世界卓球選手権」の中止が、やっと、今になって、確定しました。これからすると、オリンピック中止の決定は、ワクチンが期待される2月までずれ込む可能性があり、その間は、感染者が増えても、非常事態宣言が出されない可能性があります。その場合には、かなり深刻な医療崩壊を想定しておく必要があります。

 

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図1 東京都の感染者数の推移(左軸:人、感染者数、経路不明感染者数、右軸:%、Google Transitデータ、12月16日版Google予測データ)

 

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図2 東京都の感染者数のトレンド(12月11日から23日データ使用)

 

 

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図3 東京都の7日平均感染者数と実感染者数の偏差(s3)のヒストグラム(12月1日から23日データ)

図4統計量

hist(s3) summary(s3) Min. 1st Qu. Median Mean 3rd Qu. Max. -256.14 -130.39 -20.43 -17.19 71.43 223.43 sd(s3) [1] 128.614 (mean(s3)+sd(s3)) [1] 111.4257 (mean(s3)-sd(s3)) [1] -145.8023

 

 

  • COVID-19 感染予測 (日本版) 12月16日版

https://datastudio.google.com/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/4KwoB?s=nXbF2P6La2M

  • NHK特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.12.19>12-18version.