意味不明だったコロナ勝負の3週間~コロナウィルスのデータサイエンス(165)

昨日で勝負の3週間が終わりました。それにしてもこれほどわけのわからないメッセージは類をみないと思われます。

コロナウィルスの場合には、感染してから発症して、陽性反応が確定するまでに、およそ2週間のタイムラグがあります。つまり、勝負の3週間が始まった時の行動制限の効果が表れているのは、せいぜい1週間前になってからです。タイムラグ効果前の3週間の間の2週間が過ぎて、感染が少し拡大して高止まりになっています。重症患者数が増えたベットの占有率が上がっています。しかし、これらは、ほとんどは、勝負の3週間の以前の行動の結果でしかありません。

理解できない点は次のようなものですが、そもそも発言者が理解していないのではないかと思われます。その場合には、質問しても、時間の無駄で、話題にすること自体が、時間を浪費して、感染拡大リスクを増やします。

  • 何故、3週間なのか

  • 何故、11月25日からなのか

  • 評価項目はなにか。行動制限指標か、感染者数か、重症者数か、ベッドの占有率か

  • 今まで感染者数をゼロにする政策はとってきていないのではないか。だとすれば、許容できる感染拡大(管理レベル)はいくらか。また、それをあげるための、コロナ専用病棟の建設などの対策は十分行ってきたのか。

  • 勝負の3週間のためにいくら予算と人員を投入したか。注釈して置きますが、公務員の世界は、予算主義です。予備費以外の予算は1年以上前から使用目途がすべて決まっています。人員(人件費)も同じです。企業の余剰金(積み立て金)が大きすぎるといって非難されますが、公務員の世界では予算年度内の余剰金があれば、全て、回収され、税収に追加されるために、次年度の余剰金はゼロです。つまり、公務員の世界では、緊急に対応可能なことは、別目的で働いていた人を、緊急対策室のような新たな組織を作って、配置換えするだけです。簡単に言えば、人件費の流用です。これは、本来業務の手抜きになり、ブラック企業そのものです。このような、流用ではなく、正味の人員投入を評価する必要があります。今回だけの例外である巨額の予備費の利用をチェックする必要があります。

  • 勝負の3週間は、アリバイ作りではないのか。感染拡大が不可避と予想される場合には、不作為を指摘され、責任を取らされるリスクが生じます。勝負の3週間を提示すれば、不作為ではなかったと主張できます。しかも、予算支出がなければ、簡単です。

今の状況で、なぜ、この時期に、勝負の3週間が提唱されたかを説明できる仮説は、「年末年始の医療崩壊が確定的になっている状況の中で、不作為の非難を避けるためのアリバイ作り」のためだけと思います。この仮説で、あれば、感染防止を目的としていないので、2週間の潜伏期間を問題にするつもりが無いことも当然となります。あまり、楽しい仮説ではないので、他の仮説が成り立つとうれしいです。

ただし、公務員の世界や、授業料収入が殆どの大学のように予算主義的な会計になっている組織では、最近は成果主義の評価システムが導入されたため、アリバイ作りが横行しています。筆者は、本来の評価主義は、組織の中でうまく回っていないところを抽出して、手当することだと理解しています。これは、人間ドックにかかって、悪いところを見つけて、致命的になる前に、改善する方法です。評価の目的は、悪いところを抽出することにありますから、価値のある評価結果は、問題なしのAとBではなく、問題ありのCとDです。普通は、このあと治療しますが、予算主義の組織では、治療費が捻出できません。また、施策は完全主義で失敗はない(CとDはない)建前になっています。つまり、全てAとBの病気でない証明書を発行することが正義になっています。これが、アリバイ作りの文化です。問題点のCとDをフランクに議論して、改善できない組織は、アリバイ作りに専念して、最後は破滅します。

 

参考:

図1は、いつもの東京都の感染者数のグラフです。16日の678人まで入れました。Google予測は、古い12月9日版のままで、Google Transitだけを更新しています。11月25日から2週間で12月9日ですから、行動制限の効果が出ているのは右の赤い四角の部分になります。Google Transitの行動制限率は14日進めた表示になっています。つまり、11月25日以降の行動制限は、赤い四角の中の黄緑色の線で、少しですが制限が拡大して(へって)います。感染者数は、「元の感染者数x感染拡大率」になります。感染拡大率は、図1でいえば、曲線の傾きです。図1からわかるように、12月10日からの感染者数の曲線の傾きは、11月20日頃の傾きよりは緩やかになっています。つまり、勝負の3週間で感染拡大率は下がっているのですが、分母の感染者数が拡大してしまっているため、感染者数が拡大しています。過去に、曲線の傾きが下がったところを赤い丸で囲ってあります。10月末くらいまでは、赤い丸の部分と行動制限率が下がっている部分に対応がみられ、その部分はカレンダーでは連休に相当します。つまり、休みに行動を自粛することで、感染拡大が減っていたと思われます。この傾向は11月に入ると全く違った動きになります。この前後に生じた大きな変化は、Go To事業以外は思い当たりません。問題は、疑わしきは罰せずでは感染拡大は止まらないことです。疑わしければ、いったん、中止してみることが原則と思います。これは、だれの責任かという問題ではなく、どうして、感染拡大を止めるかという課題だからです。Go Toを継続できる条件は、「これこれの理由で、感染は縮小するはずなので、Go Toを続けも大丈夫である」と説明できる場合だけです。因果がわからないのですから、とりあえず、原因の可能性のある要因を1つずつ取り除いて、変化をみることが基本のはずです。これは、Go To事業にかぎりません。

 

 

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図1 東京都の感染者数の推移(左軸:人、感染者数、経路不明感染者数、右軸:%、Google Transitデータ、12月09日版Google予測データ)

 

  • COVID-19 感染予測 (日本版) 12月9日版

https://datastudio.google.com/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/4KwoB?s=nXbF2P6La2M

  • NHK特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.12.15>12-13version.