太陽光発電を増やすとクマが人を襲う

太陽光発電が環境によいということで、森林の木を切って、太陽光発電のパネルを設置したところがかなりあります。

マスコミで問題になるのは、温暖化ですが、国際条約では、生物多様性条約がより広範な拘束力をもっています。生物多様性条約は、環境経済学の手法を用いて、人類の生存と環境に最も適した政策を選択することを求めています。生物多様性条約では、環境利用のいろいろな機能を各種サービスとして位置づけ、サービスの総合便益が最大になる政策を選択することを求めています。

森林を切って、太陽光パネルを設置した場合に、発電による便益が発生しますが、それまで、森林であることによって提供されたサービスは失われます。これは、CO2を吸収する機能だけでなく、食物連鎖としての植物生産が失われることになります。生物多様性条約は、政策を実施したときに生じ、失われるすべてのサービスを合計して、プラスになる場合にのみ、その政策が妥当であると考えます。プラスになる複数の政策がある場合には、最大のプラスの値が大きな政策を選択すべきと考えます。

現代の生態学では、エネルギー収支が大きな法則の一つです。森林は落ち葉を形成し、落ち葉は、ミミズや河川の底生生物の餌になります。こうした生き物は、食物連鎖のさらに上位の生物に捕食され、エネルギーのピラミッドを作っています。ピラミッドの頂点にいる生物は、オオタカやクマです。森林が減って、落ち葉が減ると最終的には、クマの餌が減って、クマの生息数が減少します。しかし、短期的に急激に餌が減れば、現在、生きているクマが、十分な餌を得られないために、人里に降りてきて、餌あさりをするようになります。つまり、生態学は、「太陽光発電を増やすとクマが人を襲う」可能性があるから、十分注意して政策決定をすべきであると主張します。

もちろん、開発面積が大きくなければ、推定される影響も小さくなるので、無視できるレベルの差になるかもしれません。ただし、その場合でも、プラスとマイナスの生物多様性サービスを推定評価することを生物多様性条約は求めています。調べもせずに、関係ないと決めつけることは、条約に反する態度になります。