コロナ対策と温暖化対策と少子高齢化対策の戦術・戦略リスト法

現在の大きな政治課題は、コロナ対策と年金問題を含む少子高齢化対策と温暖化対策と思われます。さらに、産業構造や年功序列に見られるような雇用ルールの変更も大きな課題ですが、これは、年金問題を含む少子高齢化対策と重複するところがあります。

コロナ対策も当初はうまくいけば1年くらいの短期の問題を凌げば何とかなると思われてきたかもしれませんが、現時点では、あと数か月で解決できると考えている人はいなくなりました。たとえば、オリンピックは、コロナと無関係にのびのびできると予想している人は皆無でしょう。

そうなりますと、この3つの課題は、短期的な対策と、中長期的な対策を同時進行させなければならないことになります。中長期的な対策とは、短期的な対策を積みあげて出来上がるものなので、戦略と戦術の組み合わせが必要になります。ここでは、戦術と戦略に分けて、課題をリストアップする方法(ここでは、戦術・戦略リスト法と呼びます)を試してみます。


  • 温暖化についていえば次のように考えられます。

戦略:2050年までに温室効果ガスをゼロにする。....以下省略。

戦術:現政権あるいは2年後などの近未来において効果ガスを何%減らす。あるいは、対策技術を何%開発する。....以下省略。

  • 少子高齢化と年金、雇用、産業構成についていえば次のように考えられます。

戦略:2050年までに、出生率をXにする。GDPをXにする。労働生産性をXにする。女性の議員比率、企業役員比率をXにする。IT産業のGDPをXにする。年金の中央値をXにする。高齢向けの交通手段と住居の充足率をXにする。義務教育におけるITの活用を授業時間のX%以上にする。....以下省略。失われた年金は?

戦術:現政権あるいは2年後などの近未来において出生率をX%回復する。....以下省略。

  • コロナウィルス対策についていえば、次のように考えられます。

戦略:2021年末までにワクチンの接種率を80%以上にする。日感染者数を最大でもX人以下にする。日感染死亡者数を最大でもX人にする。コロナウィルスで失われた観光関連雇用をIT雇用にX万人切り替える。....以下省略。

戦術:12月末までに、日感染者数、日感染死亡者数の増加率をマイナスにする。....以下省略。


以上は、イメージを得るためのサンプルです。本当は、専門家が多数いますから、専門家に協力頂いて、こうしたリストを共有管理することが良いと思います。Git HubかGoogleドキュメントを使って、少なくとも3か月ごとくらいに、リストを作って、バージョンアップしてほしいです。本来は、学術会議のような時代遅れのシステムではなく、各学会がこうしたリストのどの部分に貢献できるかを自主的に提案して、それを調整するシステムを作ることが可能と思います。今回のコロナでは、専門家委員会以外の学会は全く発言が見えませんが、これは、サイエンスコミュニケーションシステムの欠陥と思われます。学術会議、学会といったコミュニケーションシステムが、紙と実際の会議ベースでできていて、まったく、時代にそぐわなくなっているとも思われます。

こうしたリストを思考実験で作ってみると、問題の所在がよくわかります。あまりに、いろいろなことに気づいて、ここでは書ききれません。なので、今回は、次の点におおきくまとめておきます。

  • 戦術・戦略課題リスト法では、何が欠けているかは明確になります。

  • 戦術・戦略課題リスト法では、認知科学的な限界が明らかになります。人間の脳はあまり複雑なことを同時に複数処理することができません。つまり、処理能力の限界があります。これを、クリアするためには、図形化などの補助ツールを使うか、逆に課題提示に制約をかす必要があります。フェークニュースが広がり、ポピュリズムの政治が拡大するときに、論理的な正論では解決できません。認知科学的なルールが必要です。

  • 戦術・戦略課題リスト法の次のステップは課題間の関係を整理することです。例えば、温暖化対策とコロナ対策と年金問題は、同じ財源の取り合いになるので、上位の課題として、各テーマ間の財源調整をどうするのかという課題が存在します。

  • 予測と決断(意思決定)の区別を明確にすることができます。コロナにしても、温暖化にしても、予測は、意思決定の結果でかわります。つまり、意思決定条件のない予測に意味はありません。逆に言えば、予測のない意思決定にも根拠がありません。

  • 課題間のアンバランスが一目瞭然になります。例えば、温暖化は2050年の戦略を論じていますが、コロナ対策は、来週の戦術を論じています。これは、どちらも、バランスを欠いています。来週のコロナ対策を意思決定できない同じ人間が、2050年の温暖化対策をまともに論ずることができるとはにわかには信じられません。