基本に返る(2)
前回の続きです。
かいつかのレシピ(2)
レシピは、「オーブントースターで50から60分」というものですが、手元にはオーブントースターがありませんので、オーブンで代用することにします。その場合に、オーブントースターに相当するオーブンの温度は何度かを決める必要があります。オーブンやオーブントースターでは加熱温度が200度を超えると、温度管理が難しくなりますので、200度を超える温度の場合には、加熱時間の制限をかけます。逆にいえば、格段の温度表示のないオーブントースターは、200度未満になっていると思われます。
使用しているオーブンレンジの場合には、オーブンのデフォルトの温度は170度です。なので、この温度を使うことにします。なお、170度で長時間加熱するレシピは、別に、かいつかのオリジナルではなく、筆者がこのシリーズで最初に推奨している方法でもあります。かいつかのオリジナルがあるとすれば、竹串で、加熱の進み方をチェックして、竹串が入るようであれば、加熱を中止するという点にあります。今回は、ステンレスの温度計(写真8)の針を竹串の代わりに使います。
加熱は、170度の余熱なしのオーブンで、今回は経過を見るために、10分単位で加熱し、最終的には50分まで加熱しました。20分加熱したところで、一度、サツマイモをひっくり返しています。なお、オーブントースターとオーブンを比べると、オーブンは熱風で加熱しますので、オーブントースターよりもサツマイモの表面が乾燥しやすくなります。
写真1は生芋で、保存は新聞紙でくるんで行いました。加熱前によく洗って、金串で小さな穴をあけ、水分をよくふき取りました。生芋の重量は110gですから、Sサイズになります。なお、焼き上がりの重量測定は忘れてしまいました。
写真2が、30分経過したときの写真です。蜜が少し出ています。サツマイモの中央の穴は温度計(写真8)を入れたときにあいたものです。30分経過するまでは、サツマイモが硬くて、温度計が入りませんでした。なお、針を挿入して温度を測る方法には困難が伴います。というのは、温度計が金属でできていますので、針をサツマイモの中央を目指して挿入しても、周辺の温度が金属を通じて伝播する可能性があります。温度計のメモリが安定した値になったときには、中央と一番温度の高い皮のすぐ下の平均温度になってしまうと考えました。このため、温度計の目盛りは、最終的に安定した数字ではなく、温度上昇の速度が落ち着いたところを読んでいます。なお、皮の部分の温度は、写真9のチョコレートを加工するために購入した温度計を用いています。
写真3が40分経過したところです。温度計でできた穴からも蜜が出ています。
写真4が50分経過したところです。レシピの加熱時間は50から60分で、もう10分加熱するという選択もありますが、今回の実験の前に行った予備実験では、60分加熱すると、サツマイモの端の部分(ここでは耳を呼びます)が硬くなってしまいました。これは、オーブンを使うとサツマイモが乾燥しやすくなるためと思われます。Sサイズのサツマイモでは加熱しすぎると、サツマイモが焦げるだけでなく、耳が硬くなって食べられなくなります。そこで、今回は加熱は50分で止めることにしました。
写真5が、写真4のサツマイモをアルミホイルからはがして、裏返したところです。アルミホイルと焼き芋の間には、蜜が固まってついていました。
写真6が焼き芋の断面です。透明な羊羹系の焼き芋になっています。食味は合格と思います。
写真7は焼き芋の耳の部分の断面です。この部分も柔らかく食べることができます。
図1に焼き芋の加熱時間と温度の関係を示します。皮の温度は30分すぎると100度を超えます。おそらく、皮のすぐ内側の焼き芋の一番外側の部分は、30分を過ぎると100 度になっているはずです。
サツマイモの中の温度を計測することは容易ではありません。ここでも、20分までのサツマイモは硬くて、温度計がサツマイモの中央まではいりません。ただし、30分、40分のデータをみると皮の温度とサツマイモの中央の温度差は20度くらいです。そこで、10分、20分のときにも、皮とサツマイモの中央の温度差が20度と仮定して、補間したグラフが図2です。大まかには、図2のような温度変化をしたと思われます。
問題は、麦芽糖が形成される温度です。文献により、違いがありますが、中心温度が70度または80度で麦芽糖が形成されるとする文献が多いです。仮に、70度とすれば、20分頃までには、反応が終了していることになります。80度の場合ですと、30分までに、反応が終了していることになります。しかし、写真を見ると、蜜が出始めるのが30分で、その後も蜜が増えていきます。この解釈には、2つが考えられます。
このように、石焼き芋を真似すれば、そこそこ美味しい焼き芋ができるので、それでよしとする方法もありますが、反応の温度を見ると、謎が多いのです。