人口の経済からITの経済の説明で、2極化について、説明不足であったと思われるので、補足しておきます。
図1は、年代ごとの産業構造の変化のイメージを示しています。
I) 1960年ころは農業が中心でした。バンドの幅は就業人口を、緑色は主にGDPを稼いでいる産業を示します。
II) 1960年から1980年にかけては、農業を離れて、工場で働く人が増えます。この時には、最大の就業人口は工業であって、GDPの大きな部分も工業で生み出されます。
III) 次に、2000年ころになって、ものつくりは国内からはなくなります。就業の最大のセクターは、サービス産業になります。サービス産業はGDPの大きな部分を稼ぎますが、その中身は、一部の高給取りと多数の低賃金からなっています。そして、アベノミクスでは、後者の雇用が増え、失業率は下がりますが、平均賃金は低下してしまいます。
さて、I),II),III)の時には、雇用が最大の産業と、GDPの稼ぎ頭の産業が一致していました。この場合には、「その時代の主流の産業=GDPが稼げる産業=主たる雇用を与える産業」の図式が成り立ちますので、主たる産業のことだけを考えればよかったわけです。
さて、一番下のIV)の段階に達しますと、GDPが稼げる産業≠主たる雇用を与える産業に2極化しますので、常にこの2つを考えなければならないわけです。しかし、今までの習慣に慣れてしまうと、メインの1つの産業だけを考えてしまいます。
ITの経済
一番下のIT産業を牽引するのはある種の天才と思われます。というのは、ITの知識は、直ぐに陳腐化するので、時間をかけなければ学習できない人は、最初から、レースに参加できないからです。知識はすぐに陳腐化するので、使う直前に学習して、コーディングして、そのあとは、いったん忘れてしまうことが原則です。これは、知識は、覚えておいても陳腐化するので、無意味で、使う直前にチャージすることがベストになるためです。こうした知識の使い方は、従来の暗記中心のカリキュラムとは相入れません。
こうしたIT産業を興すために必要な資源は人です。税制措置や補助金は効果が全くありません。100歩譲って考えられる施策は、自由度の高い教育や、生活しやすい環境でしょう。後者の実現のために、米国のIT企業が配慮していることはよく知られています。
現在のお金をばらまく施策は全くナンセンスです。こうした施策では、望ましい育てたいタイプの人が見えきません。
数の経済
こうした高スキルの人は数が少ないので、もう一つの多数派の処遇を考える必要があります。数の経済は、GDPに占める割合が減っていきますが、就業人口に占める割合は減らないのです。
認知バイアス
つまり、常に、2つグループの人に対する施策を考えないと経済と社会が廻らなくなります。ITの経済になるから、数の経済が弱くなるというのは、あくまで、GDPベースで、労働人口ベースでは、依然として、メジャーな部分として残ります。前回の説明では、この点が舌足らずでした。