デジタルカメラの未来

データサイエンスの記事にも書きましたが、山本康正「2025年を制覇する破壊的企業」には、ITがこれからの企業経営に与える影響が書かれています。その中に、オリンパスがカメラ事業から撤退したことが、産業構造の変化の例としてあげられています。

山本はユーザー目線の企業だけが生き残るという視点です。ユーザーの経験価値を最大化することが企業の経営の目的でなければ生き残らないという意見です。

これは、カメラで言えば、ユーザーが撮影に求めている経験の価値の最大化を図るということになります。

写真を撮るという経験は、記録を残したい、記憶を共有したいといった点になると思われます。ピントがよくあって、画質が良いことは、望ましいことではありますが、シャッターを押すだけで撮影できるとか、どこにでも持っていけるという経験の価値を上回るものではありません。また、撮った写真をいつでも見ることできるという経験価値も非常に大きなものです。絞りや、シャッター速度やISOのことは普通のユーザーは知りたくはありませんし、知らないでも、ともかく良い写真が撮れればよいのです。そして、ここでの良い写真とは経験価値の高い写真で、イベントや場所や友人顔が写真をみて思い出せる、その写真をいつでもどこでも取り出せることに価値があります。

スマホの画質が、センサーサイズが同じコンデジに追いつかれたのが、デジカメが売れなくなった原因という分析が過去にありましたが、これは、カメラマン目線の経験価値です。スマホであれば、撮った写真をいつでも見ることができて当たり前ですが、デジカメでは、できません。つまり、デジカメはスマホユーザーの経験価値からみれば、欠陥商品なのです。

デジカメは欠陥商品ですから、フルサイズで画質が良くても売れることはありません。プロのカメラマンは、機材が高いことで、アマチュアとの差別化を図っていますから、高い機材は望ましいと考えます。昔は、カメラは高価で、画質も現在のスマホ以下でした。航空機のチケットも高かったです。海外で起こっていることは、プロのカメラマンの写真でしか知りえませんでしたし、写真雑誌もありました。現在残っている写真雑誌はナショナルジオグラフィックくらいしかありません。この雑誌の写真は素晴らしいですが、1枚撮影するために1週間かけることもざらです。こうした特殊な写真以外は、インスタグラムやyou tubeで素人の撮った写真で、世の中で何が起こっているのかを知るようになりました。つまり、プロのカメラマンの出番は激減しています。昔は、お金持ちは運転手を雇っていましたが、現在では、お雇い運転手はいませんし、タクシーやバスも自動運転になるのが時間の問題です。同じように、プロのカメラマンも9割は失業するでしょう。例えば、焦点合わせや露出合わせをマニュアルでおこなっても、動くものを撮影する時には、デジタルカメラの自動モードとは勝負になりません。

自動撮影の機能は、スマホがデジカメをはるかに上回っています。山本康正「2025年を制覇する破壊的企業」を読むと、ソニーはAIの部分をマイクロソフトに任せて、センサーづくりに専念しているようなので、今後も残ると思いますが、その他のカメラメーカーはアウトと思われました。あとは、ライカ陣営がどうなるかでしょうか。