アニメ映画「鬼滅の刃」がヒットしています。
「鬼滅の刃」には、コミックの原著、TVアニメ、アニメ映画の3種類があります。アニメ映画は、TVアニメの続編になっています。
今回、考えるのは、コミック版です。
「鬼滅の刃」の主な登場人物は、鬼になった人(鬼)のグループと、鬼を退治する鬼滅隊のメンバー(人間)です。
鬼のグループには、厳密なランキングがあり、番号の小さい方が強いことになっています。一方、鬼滅隊のメンバー(人間)には鬼ほど厳密なランキングはありませんが、大まかには、柱と呼ばれる一軍の人間がいて、その後に二軍、三軍と続いています。野球と同じように、かつて一軍にいても、現在はランクおちして、リタイアした人も登場します。
コミックの主要テーマは、鬼のグループと鬼滅隊の人間グループが対戦して、最終的にどちらが勝つかというものです。
鬼滅隊の一軍に入るには、厳しいトレーニングをして、戦闘能力を高める必要があります。鬼滅隊の一軍に入れば、より強い鬼と対戦できますが、他には特典はありません。この条件では、個人的に鬼によほどの恨みがある人以外は、鬼滅隊の入隊希望者はいません。一方、鬼と対戦すると、一軍の隊員に死亡者が出て、欠員が生じてしまいます。この場合には、二軍のメンバーを昇格させるか、欠員のままで置くことになります。無条件に昇格させると、一軍のメンバーの戦力低下になります。かといって、欠員のままで、戦うことも不利になります。
これと、ほぼ同じ問題が、鬼のメンバーにも発生します。両チームとも、極度の人材難にあえいでいます。
まとめますと、「鬼滅の刃」は業績主義の組織管理の物語です。この物語の苦しいところは、業績を上げても、それに応えるだけの報酬を払うことができない点にあります。かといって、年功序列では、鬼滅隊は鬼には勝てないのです。現在の日本企業を復活させるには、数の力では無理で、少数の非常にポテンシャルの高い人をつなぎとめて、その人の能力を発揮する場を与える必要があります。しかし、依然として、年功序列から抜け出せず、こうした少数の突出した能力のある人間をつかう組織マネジメントに成功している日本企業は多いとはいえません。
つまり、「鬼滅の刃」は現在の日本企業の組織マネジメント、人材マネジメントの現状を反映した物語になっています。コミックでは、もちろん、登場人物が「報酬が少ない。」といって、サボタージュしたり、人間をやめて鬼に寝返ったりしない訳ですが、実際の組織マネジメントでは、こうしたことは日常茶飯事のはずです。おそらく、多くのサラリーマンは、「鬼滅の刃」の中に、組織マネジメントの見果てぬ夢をみているように思われます。