コロナウィルスとネットワークモデル

北海道の感染者数が増加しています。ここでは、ネットワークとモデルについて整理してみます。

一般のオブジェクトモデルは、図1のようなものです。appleというオブジェクトがあり、属性値として、赤い、果物、丸いなどがついています。実在論で問題にされるのは、通常はオブジェクトです。コロナウィルスのモデルでも、人がオブジェクトで、感染している、感染していないが属性値になります。

図2は関数(写像)のモデルです。関数は2つの集合の要素の間に1対1の対応関係があることを意味します。ここでは、集合の要素は、オブジェクトである必要はありません。たとえば、xがヒーターの温度、yが鍋の水の温度といった具合に2つの属性値の間の関係を表します。この場合には、xとyは、2つのオブジェクトの属性値になっています。関数の場合には、関数が実在するか否かは問題になりません。xが原因でyが結果であれば、これは因果モデルになります。ただし、因果モデルの場合には、xがyに先だって起こると考えられることが多いです。ですから、移項できるかは場合によります。

図3はネットワークモデルです。これは、コロナウィルスを考えるとわかりやすいです。たとえば、AとBのネットワークは、AさんとBさんの接触の割合を表します。ネットワークのモデルでは、関数とは異なり、ネットワーク同士を比較します。たとえば、スーパーに行くと、ピザ用のチーズとピザソースは一緒に売られています。これはネットワークモデルで考えると、ピザ用チーズを買うお客さん(これが、お客さんとピザ用チーズのネットワーク)とピザソースを買うお客さん(これが、お客さんとピザソースのネットワーク)を調べると、2つのネットワークが同時に出来上がる確率が高いことを意味します。ネット販売の推奨システムも、基本的には、同じ考えてできています。しかし、ちょっと考えるとわかりますが、ネットワークの数は、オブジェクトの組み合わせの数になるので、とんでもない数になります。実際に、ネットワークを表すには配列を高次元に拡張したテンソルを使います。普通に考えれば、そんな次元の大きなデータは手に余って使えないと思われますが、実際のデータをみるとネットワークが形成されるのは、組み合わせのごく一部で、データは、テンソルの表面に集中しているなどといわれます。これは、コロナウィルスをネットワークのモデルで考えれば、実際にネットワークが形成されるのは、組み合わせの数よりずっと少ないことに対応します。簡単にいえば、普通の人が接触する人の数は限られているということです。その場合には、コロナウィルスの感染の拡大は限定されます。一方、Go Toトラベルをすると、一生に一度しか会わない人にもあってしまいます。Go Toイートも、いつもいっているレストランであれば、ネットワークが大きく変わることはありません。一方、宴会や、高級レストランなど、いつも行かないところに行けば、新しいネットワークが形成されますので、感染拡大のリスクが大きくなります。スーパーマーケットやパチンコやさんでクラスターが発生しないこともこうした点を考えれば納得できると思われます。

なお、テンソルを使ったネットワークのモデルが広く使われているのは最近10年ほどのことです。2000年くらいの数学の歴史で、最近10年に、このような新しい概念モデルが登場しているのは驚くべきことと思います。

 

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図1 オブジェクトのモデル

 

 

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図2 関数のモデル

 

 

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図3 ネットワークのモデル