アメリカ大統領選挙の結果

大統領選挙の結果は、ブログを書いている時点では、バイデンは248人で、優勢のネバダ(6人)、ミシガン(16人)を足すと270人になるので、恐らくは、バイデンの勝利になると思われます。トランプ側が敗北を認めるかは不透明ですが、最終的には、共和党の判断になると思われます。統計的な世界観では、現実は、裏にある真実の世界からのサンプリングにすぎないので、今回は有意な差はなかったことになります。したがって、データサイエンティストは最終的に、誰が大統領になるかには、ほとんど、関心はないと思われます。

むしろ意味のある結果は、上院で共和党の勝利が決定的になったことで、仮にバイデンが大統領になっても、サンダースよりの社会主義政策は難しくなったと思われます。バイデンの場合には、サンダースよりの票を得るために、政策を玉虫色にしてきた傾向があり、本当のところ、どこまで左よりの政策をするのかは不明です。現実にできる政策は限られているので、バイデンが大統領になっても、どのような政策を実際に提示してくるかは、分からない部分が多くあります。つまり、バイデンに投票した人は、同床異夢になっています。これは、民主党が、大統領候補の選抜段階で、政策論争ができず、候補者の人気投票になってしまったためです。従来の民主党の枠組みは、サンダースのような社会主義者が主流になることを想定していません。民主党だけでなく、アメリカ全体で、過去の赤狩りは極端ですが、今までは社会主義の賛同者は少数派でした。アメリカでは、機会の平等は強く求められますが、反面、社会主義的な、結果の平等は自由を阻害するものとしてタブーでした。しかし、中間層が貧困化して、結果の不平等が大きくなり、その結果、機会の平等が阻害されていると考える人が、特に、民主党の支持者の中に多くなりました。つまり、民主党の中では、社会主義はタブーではない、結果の平等を実現すべきであるという人が増えています。この問題は、特にお金のかかる医療費と高等教育費問題に集中しています。サンダースの主張はこの2つに結果の平等を導入するものですが、サンダースが候補者に残れなかったように、この主張は、民主党の多数派にはなっていません。つまり、政策としての落としどころは不明です。

トランプは、この2つの問題は避けて、アメリカを復活すると主張します。その主張は、矛盾していてポスト真実を使っていると非難されます。これは、トランプがポスト真実を捏造しているのでけしからんという主張です。しかし、具体策の見えない民主党の政策にしびれを切らした貧困層が、ポスト真実を求めている面もあります。認知的不協和の理論というものがあります。極端に生存に不都合な事実は、人間の脳は認めません。以前、受け持った学生が、白紙に近い答案を出して、試験に落第したことがあります。この試験は、進路に係る比較的重要な分岐点だったですが、その学生の質問は、自分は十分に答案を書いたので、落第した理由が分からないというものでした。白紙に近い答案を書いた事実を認めることは自己否定になるので脳が受け付けないのです。おそらく、民主党に投票しても、貧困からの脱却の目途が立たないと考える有権者の一部はトランプに流れたはずです。ポスト真実であってもトランプの説明に従えば、自己否定を回避できるからです。これは、宗教に帰依する心理に近いのかもしれません。

まとめますと、おそらく、次の大統領はバイデンになる可能性が高いと思いますが、有権者の支持では、有意な差はありません。つまり、誰が大統領になっても、依然として、貧困の解消と結果の不平等をどう扱うかという問題が残っています。ただし、よくあることですが、コロナウィルス対策で、トランプ政権においても、過去に例がないような支援が行われ、財政は悪化しています。つまり、財源問題はより厳しい状態にあります。