コロナ後の観光業の展望

ANAはコロナによりの国際線の乗客の回復が見込めないとして、機材を半分にして、羽田空港便に集中をはかるようです。GoToトラベルは単なる需要の先食いの可能性も高く、最大の課題は、コロナ後に合わせた観光業界の再編を図ることです。外国人観光客が注目されていましたが、「日本における旅行消費額の8割以上は日本人の国内旅行であり、そのうち6割は地方部で消費」(観光白書)なので、ANAの国際線のように、外国人を専門に扱う部署は再編になると思われますが、国内旅行者を対象にした部分は、コロナ後も引き続き営業できるところも多いと思われます。

ところで、下図1: 国内宿泊観光旅行経験率の推移にたいする白書のコメントは、「9歳以下の旅行経験率は概ね上昇傾向にあり、特に19歳以下で顕著」というものになっています。しかし、この図を見れば、一番大きな変化は、「60~79歳」で、2012年の57%が2019年の47%へと10ポイント下がっています。表1から、2020年3月の60~79歳の人口は以下です。

60から79歳日本人人口(2012.3)=9916+8398+7378+6282=31947千人

60から79歳日本人人口(2019.3)=7376+8416+8909+7146=31847千人

従って、7年間で、この10%の319万人の旅行者が減ったことになります。

その理由はおそらく次の2点と思われます。

第1に、定年の年齢の引き上げによって、老後の旅行者が減少しているはずです。

第2に、年金も含めた所得の現象です。これは円建てで考えるとドル高円安になっているのでわかりにくいですが、この7年間で、円安と相対的な経済成長の遅れが明白です。

ドル建ての一人当たりGDPの国際順位は以下になっています。

2012年 19位 48,301.7ドル

2018年 33位 39087.2ドル

データ出所:National Accounts - Analysis of Main Aggregates(国連)

つまり、貧しくなって、旅行を減らしていると思われます。

以上はあまりたいした分析ではありませんが、コロナ後を考えるのであれば、GoToトラベルだけでなく、現状分析をして欲しいです。特に、所得の減少と定年の延長は、旅行の減少につながり、今後もこの傾向は増大すると思われます。

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図1  国内宿泊観光旅行経験率の推移(観光白書)

 

 

 

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表1 年齢別人口

 

  • 令和2年版観光白書について(概要版)観光庁 令和2年6月

https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001348279.pdf

  • 人口統計

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202008.pdf

  • 日本の一人当たりGDPのランク、人口、一人当たりGDP(ドル表示)の推移

https://jp.gdfreak.com/public/detail/sp010001000119900097/6