戦争の条件の変化(4)

主体の問題

主体には2種類あります。

  • 戦争遂行を判断する主体

  • 戦争を遂行する主体(兵士)

戦争遂行を判断する主体

民衆主義では、戦争は、建前は国民の総意で始められます。戦争に限らず、実際の政治意思決定は、特定の支援グループが行っていると思われます。米国では、著名なところでは、コーク・インダストリーズのコーク兄弟が、こうした支援グループのまとめ役をしていました。しかし、トランプ大統領は、コーク兄弟のグループとは、別の支援グループで動いているといわれています。中国やロシアの場合には、トップを含む固定したグループがあると思われます。

民主主義の建前では、意思決定が特定の個人やグループによってなされることは、代表権があればかまいません。しかし、特定のグループの利益のために意思決定がなされることは望ましくないと考えられています。そのためには、戦争を含む政策決定は、特定のグループの利益のためではなく、国民全体の利益になると主張することが必要になります。ところで、政策決定が国民に受け入れる条件は、「政策決定が自分を含む国民の利益にかなっている」と信じられれば良いことになります。簡単に言えば、フェィクでも、納得してくれればよいのです。このために、次のようなテクニックが開発されて、すでに広く使われています。ポスト・トルースという言葉は、最近のものですが、古くは、2003年のイラク戦争で、「イラク大量破壊兵器を持っている」というフェイク情報が使われました。現在は、この情報はフェイクであったとするマスコミが多いですが、日本の外務省のHPでは、フェイクがあったとは書かれていません。読んでいただければわかりますが、微妙な表現になっています。ポスト・トルース問題は、簡単ではないのです。

 

  • ドッグホイッスル・ポリティックス

  • フェイク・ニュース(ポスト・トルース)

 

戦争を遂行する主体(兵士)

太平洋戦争のときには、国は、子供を多く持つことを推奨していました。戦前は社会保障がなかったので、親の面倒は子供が見なければならなかったからです。一人っ子が死んでしまうと、親が取り残されます。一人っ子は兵隊には向いていないのです。この点では、日本だけでなく、中国も戦争しにくい状況にあります。

とはいえ、無人のロボット兵器を使えば、死亡リスクは減りますので、一人っ子の兵隊も可能かもしれません。つまり、少子化社会では、兵器の無人化は戦闘能力を大きく左右します。

それから、中国の場合には、軍隊が、国の軍隊ではなく、共産党の軍隊であるという特殊な事情があります。この条件では、独立国とは何か、分かりづらいです。米国にも国軍の他に州兵がいますが、規模が違いすぎて、警察より強い程度にしかすぎません。

もう一つの課題が移民です。移民が社会に同化できていない場合には、兵隊にすることは難しいです。現在、移民を多く受け入れ、なおかつ、同化に失敗している国も多くあります。戦争を考えれば、人や、材の移動に制限がかかることはやむを得ないと思われます。これは、コロナウィルス拡大におけるマスク等の医療器材の問題でも明らかになってきています。

もちろん、フランスの外人部隊や、バチカンのスイス傭兵などの例もありますが、割合は高くはならないでしょう。

まとめ

主体の問題は、本音と建て前のギャップが大きく、扱いにくい問題です。

ここでは、入り口のキーワードを並べてみました。

次は、代替戦争について考えてみます。

 

 

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/th_heiki.html