戦争の条件の変化(1)

無人紛争の戦争の費用

中国は、インドと国境紛争を引き起こしています。香港では、(発揮してはいませんが、)軍事力を背景に、反対勢力の制圧をしています。その延長で、台湾と戦争になると予測する米国の専門家もいるようです。

ドローンなどの無人兵器による戦争は既に、米国が実施しています。防衛省無人兵器の検討をしたことがあるとの報道がありました。無人兵器が、人道的に問題があるか、否かはさておいて、無人兵器が戦争の条件を大きく変えてしまったという事実があります。この点について述べます。

中国で江沢民が力を持っていたころ中国には2つの勢力があると言われていました。一つは、上海を中心とした経済力のある勢力です。もう一つは、北京を中心とした共産党と軍の勢力です。お金持ちになると、我慢する必要がなくなるので、軍隊を務めるのはつらくなります。ですから、強い軍隊は、貧乏人出身の兵隊の多い軍隊になります。問題は、水と油のような2つの勢力がどう折り合うかです。現状では、香港の例に見るように、軍の勢力が強くなっています。

ところが、ドローンなどの無人戦争の場合には、戦争がゲーム感覚になり、きつい環境に耐えて行うものではなくなります。米国の軍隊の場合には、湾岸戦争のことはまだ、体の丈夫な兵士を求めていましたが、現在では、兵士の採用条件はIT化した武器を操れることです。このために、試験を受けても採用される比率は30%程度まで下がっているといわれています。

中国もIT化は進んでいて、個人認証が可能な管理社会に突入しているといわれています。一方では、香港のデモ隊の鎮圧を見ていると、昔ながらの市街戦が繰り返されているように見えます。この2つは相容れないので、釈然としないものを感じます。ドローンの普及を価格低下で、IT機器の価格は、けがをしやすい兵士のコストに比べて、かなり低くなっていると思われます。つまり、戦争にかかるコストが下がっているわけです。最近の中国は、以前に増して好戦的になっているようにみえることもありますが、この点が関係しているのかもしれません。

つまり、IT化によって戦争の費用が下がれば、戦争が起こりやすくなるリスクを考慮する必要があります。これは、米国でも同じで、戦死者の数が少なくなるので、戦争に反対する勢力が弱くなります。

ただし、簡単に戦争が起こりうると認識されれば、戦争回避へ努力が強まる可能性はあります。

まとめると、無人戦争が普及した結果、次のような変化が現れています。

  • 兵士に求められる条件が体力から、IT能力に変化していた

  • 貧しい兵士と経済的に成功したお金持ちという対立が薄くなった

  • 死者やけが人がでるリスクが減少した。

  • ドローンなどの大量生産機材が普及し、コストが下がった。

  • 意思決定がどこでなされるかは、条件次第と思われる。

ドローンが、プログラムで自動運行するのであれば、ピラミッド型の軍隊組織は必須ではなくなります。しかし、フラットの組織にした場合に、意思決定をどこでするかが問題として残ります。今回の中国のコロナウィルスの対応を見ていると、意思決定は全て北京でおこなわれています。つまり、北京で承認を得たプログラムコードを実行するだけであれば問題はないのですが、予想外の事態が発生して、プログラムを書き換える必要がでたときに、どのように、柔軟な意思決定をするかには対応できていません。ということは、マネジメントの上では、IT化は限定的なのかもしれません。