風景写真の遠近法の研究(5)

基準長さと知名度

遠近法の続きです。ここでは、基準長さと、知名度の高い対象について考えてみます。

写真1は龍虎塔です。写真2はエッフェル塔です。共に、塔ですが、知名度エッフェル塔が高くなります。

写真1では塔の下に人が写っていますので、これで、塔の大きさがわかります。遠景にビルが見えますが、そのことによる遠近効果は小さいと感じられます。

写真2のエッフェル塔は、サイズがよく知られているので、基準長さが長くともサイズがわかるはずですが、注視しているとおもちゃのように感じられることがあります。この構図では、塔の選択が一番遠くなっていって、上に向かって遠近が効いています。また、よく見ると、左下の船に座っている人がいます。しかし、この人は、目立たないことと座っていることで基準長さには感じられません。

写真2は、日の丸構図とも思われますが、真正面でなく、斜めの角度になっているので、対称性が崩れていて、不自然には感じられません。

写真1は日の丸ではありませんが、構図の面では、特異です。ただし、見たところでは、あまり特異性を感じません。これは、左右の塔の屋根の繰り返しパターンがミニマリズムになっているためと思います。

まとめると、知名度の高い建造物はサイズがわかっているので、一見すれば、サイズがわかるような基準長さを画面に入れなくてもよいように思われますが、実際には立っている人などの基準長さを入れた方がスケール感が明確になります。塔などの特定の対象を中心に写真を作る場合には、風景写真でも、構図上の遠近感を期待することは難しいです。そのような場合には、パターンの繰り返しを使うことで、画像に躍動感を与えることができます。

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写真1 蓮池潭・龍虎塔(高雄・台湾)

 

 

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写真2 エッフェル塔(パリ・フランス)