ガンマ補正カーブの研究(2)

ディスプレイの色域

前回Rec.709のガンマ補正関数を紹介しました。Rec.709というのは、ガンマ補正の名称だけでなく、ディスプレイの色域の名称でもあります。つまり、ディスプレイの色域のガンマがあれば、それに対応した逆変換のガンマ補正が存在します。ガンマはOETFとも呼ばれます。

色域を決定する要素は次の3つです。

  • OETF(トランスファーカーブ、伝達関数

  • プライマリーカラーの平面座標によって決まる色域

  • イルミナント(もしくはホワイトポイント)

今回は、ガンマ補正に関連の深いディスプレイの色域を整理しておきます。

  • sRGB:sRGB色空間はヒューレット・パッカード社とマイクロソフト社が提案し、IEC(International Electrotechnical Commission)で審議されて、1999年にIEC 61966-2-1として標準化された色域です。γ=2.2

  • AdobeRGB:アドビシステムズ社が1998年に提唱したRGB空間です。印刷や写真ではデファクトスタンダードといわれます。sRGBと比較すると、緑から赤にかけての色域が広くなっています。γ=2.2

  • ProPhoto RGB:Lightroomの色空間。

  • Rec.709:1990年に定められたハイビジョン用の色域です。色域はsRGBと同じです。γ=1.9-2.0が標準ですが、γ=2.2,γ=2.4もあります。γ=2.2はsRGBと同じになります。ビット深度は8ビットです。

  • Rec.2020:2012年に定められた色域で、「Ultra HD Premium」の規格でも採用されています。緑色の色空間が拡張されています。γ=2.4。また、ビット深度が10~12ビットに拡張されています。

  • DCI-P3:DCI-P3とは、米国の映画制作会社で構成される業界団体Digital Cinema Initiatives(DCI)で定められたデジタルシネマ規格です。γ=2.6。シネマの場合には、暗いところで見るので、γが異なります。

  • D65-P3,Display P3:2017年にAppleがDCI-P3をディスプレイ用に変更して定めた色域で、iPhoneMacで採用され、Android8.0で採用されている。sRGBよりも35%大きい色空間をもちます。γ=2.2。

     

sRGBがPCの標準の色域です。ブログのように、WEBで見ることを前提とした場合には、sRGBを使えば、WEBの作成者とWEBの読者が同じ色域で写真をみることができます。

sRGBから拡張された色域を使う場合には、作成者と読者を色域を一致させる必要があります。

また、拡張された色域を使うためには次の条件が必要です。

  • ディスプレイが拡張された色域に対応していること

  • OSが拡張された色域に対応していること

  • グラフィックボードが拡張された色域に対応していること

PCの通常のグラフィックボードは8bitまでです。これを拡張するには、Blackmagic Design社のDecklink Mini Monitor4Kなどの拡張された色域に対応したボードに入れ替える必要があります。

色域の拡張には、画像の作り手と画像の受け手が同じ環境にあることが望ましいです。AndroidのDisplay P3が進めば、Windowsもディスプレイやグラフィックボードなどのハードウェアも含めて、sRGBから標準で拡張された色域をサポートするようになると思われます。

darktableでは、写真1から写真4のようにソフト上は色々な色域に対応していますが、OSやハードが対応していない場合には設定を変えても効果はありません。

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写真1 softproof profile

 

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写真2 display profile

 

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写真3 preview display profile

 

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写真4 histogram profile