日本学術会議の委員の任命が問題になっていますが、実質的な問題は、知識の半減期の短縮にあることが認識されていないと思われます。ディープラーニングが実用になることが分かったのは2012年で、5年ほどで、どの程度まで実用になるかという問題が決着して、現在は普及期にあります。2007年にiPhoneが出てきて、同じように5年ほどで利用が拡大して、その後はスマホのない生活は考えられなくなりました。
以前から、IT分野は、変化速度はdog yearだといわれ、知識の半減期は7年といわれましたが、最近のAIでは1年前のテキストは、そのままでは使えないといわれています。ITの知識の半減期が更に短くなり、また、ITの知識の影響範囲は、スマホに見られるように、全ての分野に及んでいます。投資家のジム・ロジャーズは、現在の世界は10年すれば総入れ替えになるので、それを前提に投資しているといっています。
今の世界では、10年以上同じ分野で研鑽をつんでいても、10年以上前の知識の価値はほぼゼロです。これは、ガラケーの専門家がスマホの専門家になれないことでもあきらかです。
結局専門家の価値は、過去5年間に何ができたかで決まります。これが、ITだけでなく、全ての分野にパンデミックのように広がっています。学術会議の委員といったポストに価値があると考えるのは、業績が評価できないので、外形で判断するからです。研究者がテニュアをとるときに、論文の本数が問題になりますが、これも外形による評価です。おそらく、異なる分野を横断して評価することは、人間には、取扱情報量が多すぎてできないのです。しかし、IT企業が、外形で業績評価をすれば、すぐに、つぶれます。情報量の多さは、AIでは障害にならないので、IT企業は、AIを使った業績スコアを計算して、使っているはずです。
繰り返しになりますが、企業の生き残りには、「知識の半減期の短縮」にどう向かい合うかを避けて通ることはできないと思います。