シーン参照ワークフローでは、表示参照ワークフローより、画像劣化の少ない、画像編集を目指しています。表示参照ワークフローは、ダイナミックレンジがおおきな画像では、画像劣化が起こります。特に、シャドウとハイライトモジュールは、画像劣化の大きなモジュールです。今回は、その比較です。
写真1が、シーン参照ワークフローの画像です。
写真2が、表示参照ワークフローの画像です。ここでは、シャドウとハイライトを強く使っています。
写真1は中間トーンが良く出ています。遠景の林は、靄がかかってよくみえません。遠景が良く見えないのは自然なことで、空気遠近法と呼ばれている現象です。
写真2は、中間トーンがつぶれています。また、手前の藁にはノイズが載っています。明らかな、画像劣化が見られます。シャドウを持ち上げた結果、遠景の林では、本来は見えないはずの細部が、ぼんやりと浮かび上がっています。
2枚の写真を見て、後まで印象に残るに写真は、画像劣化した写真2ではないでしょうか。
シーン参照ワークフローは、広いダイナミックレンジを再現し、特に、今まで飛んでいた中間トーンを再現します。しかし、そのことは、シーン参照ワークフローが印象的な写真を作ることを意味しません。2010年以前に広く使われていたレンズ交換式のデジカメのダイナミックレンジは7EVしかありません。前世紀に使われていたカラーフィルムのダイナミックレンジも7EVしかありません。しかし、古い写真でも感動的な写真はたくさんあります。
写真2はいわゆるHDR風の写真です。シーン参照ワークフローは、ハイダイナミックレンジに対応した手法です。しかし、それは、HDR風の中間トーンのとんだ画像をつくる手法でないことは、理解しておくべきです。
写真を作ることは、画像を通して脳をだますことです。脳の習性を使って2次元の画像に奥行きを与えたり、今まで脳が見たことのない画像を示して、脳にショックを与える手法です。HDR風画像が、強い印象を与える理由は、普通ではありえない画像を見ている驚きにあります。