GoToトラベルと観光産業の出口戦略

GoToイート、Gotoトラベルの利用拡大が進んでいます。

しかしながら、GoToトラベルは一時的なカンフル注射であって、この政策で、観光業が持ち直す訳ではありません。この政策は、コロナ後の観光業の再編を可能にする出口戦略ではありません。出口戦略には観光業産業の産業構造を変える必要があります。

例えば、バーチャールな観光は、実需用を引き起こすトリガーとして考えられており、ほとんどが無料で提供されています。一方では、ゲームや映画は有料で収益を上げています。つまり、バーチャルで収益を上げることは可能です。ゲームのような展開を考えれば、映画俳優のAさんといく嵐山観光みたいなバーチャルの世界が可能で、参加者のデータを登録すれば、俳優と一緒に並んで記念写真を撮ったり、食事やショッピングができます。こうしたバーチャルにリンクさせて、食材やお土産を販売することも可能です。ゲームにはまっている世代であれば、マーケットはあると思います。ポイントは、実際に旅行にいくよりもバーチャルの体験の方が上回っている点があればいいわけです。

高齢者になって、車いすを利用するようになると旅行は限られます。また、ペットを飼っていると、ペット可の旅行先も限られています。こうした場合には、リアルの世界で、車いすやペットに対応した観光産業を展開することが1つの解決策ですが、バーチャルの世界での解決もあると思われます。例えば、バーチャルの世界で年をとってから、新婚旅行のコースを再度訪問するなどは、マーケットがあると思います。その場合には、バーチャルツアーの料金を払えば、ネット通販でお土産を買うよりも、安く買えるとか、リアルとバーチャルツアーでしか販売しない商品を作るとか差別化戦略は可能です。

リアルツアーにいく場合でも、バーチャルツアーの価値はあります。パックツアーでいっても、各ポイント、決まった地点で30分くらい止まるだけで、自分の関心のあるところを詳しく見ることはできません。ガイド無しで旅行する場合には、事前に、調べるのですが、現在のデータでは、実際に行ってみないとわからないところが多くあります。国内ですと、これは、迷子になったよで済みますが、海外の観光地の場合には、独自行動はスリなどの犯罪被害にあうリスクがありますので、体力に自信があって、所持金の少ない若いころなら、バックパッカーもできますが、中年以降は覚悟がいります。事前にバーチャルツアーでルートを詳細に確認できれば、リアルのツアーでの行動の自由度が高くなります。航空券などを払って、目的地についた場合には、そこでの行動の時間価値は高いですから、時間が節約できるのであれば、事前にバーチャルツアーに代金をって下調べをしてもおつりが来ます。

バーチャルツアーは、時間と空間の制約をうけません。東北の夏祭りツアー、桜の花のツアーなど1年に見どころが2,3日しかない場合には、リアルツアーは大きな困難を伴います。しかし、バーチャルツアーであれば、お祭りや桜を1年中見ることができます。いつも晴れで、雨の日も、曇りの日もありません。昼間でも夜景を楽しむことができます。有名なレストランで夕日をみながらの、お食事であれば、事前に、食事を宅配してもらい、自宅の大型スクリーンで、あたかもそのレストランから夕日をみながら食事することができます(注1)。こうしたサービスは、高齢者の富裕層には大きな潜在マーケットがあります。

リアルなバーチャルツアーを実現するには、建物内部の詳細は3Dデータが必要です。こうした3Dデータを利用した場合には、データ提供元に、お金が還元する仕組みを作ることが必要です。たとえば、古い寺社では維持管理にお金がかかり、今までは、主に、拝観料でそのお金をまかなっています。しかし、バーチャルツアーでのビジターからもお金が徴収できれば、維持管理が容易になります。また、バーチャルデータは犯罪に利用される可能性もあります。窃盗などは、詳細なデータがあれば、精密な計画を立てやすくなります。したがって、建物内部のデータ公開は、限定されるべきで、公開した場合には、セキュリティを高める必要があります。このために、対策費が余分にかかります。場合によっては、リアルと同じように、バーチャル拝観料をとるべきかもしれません。

リアルのツアーで、折角、行っても、人人人で人しか、写真に写らず、おまけに雨で風邪をひいたような場合に比べれば、バーチャルツアーの方が良いです。インバウンドで、人だらけの質の悪い観光を提供して喜んでいるのは、顧客満足度を度外視しています。リアルツアーの料金を3倍程度に上げて、旅行者数を減らして、減った分をバーチャルツアーで稼ぐ方法もあると思います。

安い料金で旅行して、どこもが人だらけで、旅行をやめる人もいるはずです。

顧客満足度は、旅行の満足度の合計ですから、満足度の低い3回旅行よりも、満足度の高い旅1回の旅行の方が満足度スコアが高くなることもあり得ます。その場合には、顧客は高い料金を払うはずです。

1年に1回しか旅行に行けるまとまった時間が取れない場合、例えば、バーチャルツアーで5カ所を旅行して、ベストなところを選択する方法もあります。

 

以上はかなり高度なバァーチャル空間ですが、身近なところでもバーチャル以前の問題もあります。

例えば、自動車で旅行するときに、最大の問題点は駐車場の確保です。WEBで駐車場を見ることはできますが、普通はそこで予約はできません。パックツアーは旅行会社がパックをセットして販売する方法で、パック代金を事前に振りこめば、後はほとんどお金はいりません。今の時代に、個人で同じことができない技術的な障害はないのですが、駐車場、ホテル、食事の予約と料金の前払いをワンストップでできるサービスはありません。

結局、観光協会も市町村も、観光をパックツアーをつくる旅行会社に丸投げして、主体的に地域を観光を組み立てていくというマインドセットがなくなっています。

人間はGoToトラベルのように目の前のお金に弱いです。しかし、何をすべきかという視点を失うと、お金が無くなった時に終わりになってしまいます。

 

注1:

使用頻度の低い大型スクリーンを購入することは、経済的な合理性がないので、映画館のように、大型スクリーンを備え、指定レストランから配達された実際の食事を提供する仮想食事館や、出張料理人のように、スクリーンと料理をもって、高齢者施設で、食事付きバーチャルツアーを提供するサービスの方がよいかもしれません。

このシステムの要点は、こうした受信側の仕組みよりも、発信側の仕組みにあると思われます。観光地はスポットではなく、エリアの魅力です。エリア全体で、バーチャルなデータを整備して提供するには、地域の合意が必要で組織づくりに行政の後押しがあると進展が期待出来ると思います。あるバーチャルレストランの夕日の食事だけであれば、発信側のレストランと契約して、夕日の動画と店内のバーチャル映像、食事の提供を受け、受信側の出張料理サービスがあればできます。でも、それで受ける満足度と、食事の前に、エリアをバーチャルツアーで移動した後の食事では、満足度が大きく違うはずです。こうした問題には、脳科学認知科学の視点を入れて分析する必要があります。