縦割り行政と列車の止め方

縦割り組織

新内閣は、行政の縦割りをなくすことをおおきなテーマに掲げています。欧米と比べてみればわかりますが、行政の縦割りを決めている大きな要素は、省庁別の人事ルールです。人事は省庁別で、省内で動きます。省内は、年功序列で、新卒で採用されたあとは、本人の適正に関係なく、ポストをローテーションします。すごろくのように、ポストが上がっていくと給与が増えます。民間会社ですと、利益を増やした場合には、処遇が改善しますが、公務員の場合には、予算と新規ポスト(組織)を増やしたことが、評価されます。これは、予算獲得が、国会議員からの評価につながること、ポスト獲得が組織内に新たな高給ポストを作ることから組織内の支持が拡大するためです。

このルールが使われると、予算が拡大すること、組織が拡大することを止めることができません。つまり、人事ルールに政策評価が結びついていません。予算を増やさずに、既存の予算の中で、アウトカムズがより多くでるような改善をしても評価されません。研究者の世界では、作成した論文の本数と獲得した競争的資金が評価の対象になりますが、現在の行政では、論文の数に相当するアウトカムズの評価指標はありません。デジタル化が進まない最大の原因は、それが評価対象になっていないためです。

また、縦割りは、省庁別の人事ルールに結びついています。これは、縦割りの人事ルールが適用できるほど規模が大きくない自治体を見れば、縦割り問題がないことで確認できます。

列車の止め方

2013年頃から、国際的に人事を行っいてる民間会社では、年功序列をやめてきています。これは、年功序列が非効率なことと、日本人とそのほかの国の人で異なる給与体系をとっているダブルスタンダードを解消するためです。ただし、これは、新規採用の職員には適用されますが、それまで採用された職員にどの程度適用されるかはケースバイケースで、ハードランディングを避ける方法を模索しているように思います。

会社がつぶれそうになって、給与が払えない状態になると、ハードランディングもやむを得ないということで、年功序列の給与体系が見直されます。この場合が、本当の意味での年功序列の崩壊でしょう。

いずれにしても、年功序列というシムテムは退職までの40年間の間、いったん走り出した列車は止めないという前提ですから、これを変えることは、将来の40年後の給与を変えることになります。40年後に世の中が変わっていないと考えることはできません。そう考えるとこのシステムがいかに無理な前提でできているかがわかると思います。

年功序列賃金とは、日本人の給与が国際的に低かったときに、高齢者の給与をあげることで、将来の給与があがるという人参をぶら下げて、安い給与で仕事をさせるシステムであった以外には、合理性はなかったと思います。これがスタートしたころの想定継続雇用期間は25年でした。それが、現在は40年を超えています。そう考えると、正規職員の給与があがって、年功序列が維持できなくなったことと、非正規職員が増えたことは、同じコインの裏表です。

まとめ

まとめます。今回の話題は省庁の縦割りと年功序列でした。現在、年功序列には、メリットはすくなく弊害が目につきます。しかし、年功序列という列車の恐ろしいところは、いったん走り出すとこれを止めることは非常に困難なことです。民間会社ですと、倒産圧力によって、ハードランディングが起こりますが、公務員の世界では、それはおこりません。ですから、どうやったら、年功序列という列車を止めることができるかを考えないと、省庁の縦割りはなくなりません。