補足(6)風景写真の補足(2)グラデーション・フィルター
風景写真で、空や水面が写っている場合には、空または、水の部分にだけ、フィルターをかけるテクニックがあります。空の露光は、水面の露光より高くなってしまうことが多いので、空の露光を下げると写真全体の中間トーンを細かく表現できるので、合理的な手法です。ただし、フィルム時代には、レンズの口径毎にフィルターを準備する必要があり、簡単ではありませんでした。
デジタル画像処理では、この部分を全て、追加費用もなく、ソフトウェアで対応できるので、RAW現像処理ソフトではメリットの大きな部分です。今回は、このグラデーションフィルターを取り上げます。
グラデーション・デンシティ(graduated density)
darktableのグラデーションフィルターを扱う代表的なモジュールです。
グラデーションフィルターに特化しているので、起動すると、フィルターの境の線が表示されます。
写真1は左が元の画像で、右がグラデーションフィルターをつかった画像です。
非常に高機能で、一度使ったら、病みつきになりそうです。
問題は、このモジュールをシーン参照ワークフローで使うべきかという点にあります。
シーン参照ワークフローで、どのモジュールを使うべきかの判断は、PIERREさんの「Darktable 3:RGB or Lab? Which Modules? Help!」が今のところ最も頼りになる文献ですが、そこには、graduated densityの記載はありません。
ですから、間接的な判断になります。
graduated densityはカラーグループのモジュールに整理されていますが、このグループのモジュールはLab色空間が基本なので、Lab色空間が使われている可能性が大で、シーン参照ワークフローで使うべきではありません。
graduated densityは多様なマスクが使えますが、もっとも使いやすいパラメトリックマスクを使うと、混合マスクの問題が起きります。PIERREさんは、描画マスクとパラメトリックマスクを同時に使う混合マスクには問題があるといっています。グラデーションマスク自体が描画マスクなので、graduated densityモジュールで、パラメトリックマスクを使うとその時点で、混合マスクになってしまいます。
以上のように、graduated densityモジュールを使うときには、リスクを理解したうえで使うことになります。
-
Darktable 3:RGB or Lab? Which Modules? Help!
Aurélien PIERRE
https://pixls.us/articles/darktable-3-rgb-or-lab-which-modules-help/
カラーバランス
カラーバランスはPIERREさんが開発している100%RGB色空間のモジュールです。
マスクが利用可能なモジュールには、全て、描画マスクの一部にグラデーションマスクが準備されています。
カラーバランスモジュールのグラデーションマスクで空の処理が可能であれば、graduated densityモジュールよりも画像劣化が少なくできるはずです。
写真2が処理結果で、左が元の画像、右がカラーバランスモジュールを使った結果です。
まとめ
Lab色空間で探せば、まだ、代替手法はあると思いますが、RGB色空間では、今の時点では、graduated densityに相当するツールはありません。したがって、リスクを承知の上でgraduated densityを使うことがベストです。
darktableは今までも大幅にバージョンアップを続けているので、次のクリスマスのバージョンアップに期待したいと思います。
おまけ
graduated densityの効果を示すサンプルを付けておきます。画像は、きれいな画像ではなく、編集効果の大きさで選んでいます。
写真3はマスクを使わない場合です。
写真4はパラメトリックマスクを使っています。画像が劣化しているはずですが、このレベルではよくわかりません。