国勢調査と権力

「人口の中国史」では、中国の人口調査が、人頭税と結びついていたため、税金逃れのために、人口が過少に報告される例が出てきます。

権力にとって、人口を正確に把握することは重要な事項であることがわかります。

逆に言えば、人口を正確に把握できていない権力は弱い権力といえます。

10月1日に、5年に1回の国勢調査が行われます。東京都の場合には、約3割は回収できないと予想されています。ここまでくると、中国の王朝時代の人口調査と大差がなくなってきます。

一方では、 NTTドコモの決済サービス「ドコモ口座」を使った銀行預金が不正に引き出される被害が相次いでいます。個人認証の方法としては、少し前までは、運転免許証が幅を利かせてましたが、現在では、スマホにその地位を奪われています。スマホは当初は、携帯電話の進んだものとみなされていましたが、現在では、個人認証装置としての役割が大きくなっています。銀行預金の不正引き出し問題は、銀行とNTTドコモが、個人認証装置としてのスマホの使い方を習熟していなかったことを示しています。その前には、セブンイレブンでも同様の問題がありました。10万円の給付金のスマホアプリも使い物になりませんでした。コロナ対応のスマホアプリは全く使いものにならず、普及していません。マイナンバーもエストニアの課税システムと比べれば、まったくお話しになりません。

この問題を、政府や、マスコミは、公務のIT化の立ち遅れという視点で評価をしていますが、その視点でよいのでしょうか。個人認証装置としてのスマホ利用が上手にできない点では、問題は、政府も、銀行も、コンビニも同じです。これは、アプリのバグではなく、現時点でのスマホを使った個人認証システムを関係者が全く理解できていないことを示しています。

このままでは、10月1日の国勢調査よりも、スマホの個人認証の方が、データの精度が高くなることは必須と思われます。これは、情報面では、権力が政府から、(GoogleAppleも含めた)スマホの会社に移動しているとみることもできます。国勢調査は、スマホの個人認証を使っていませんので、後で振り返れば、10月1日は権力構造の転換点の1つとして、記憶されるでしょう。

補足:今回の国勢調査はインターネットは使いますが、個人認証はPCではなく、スマホでないとできません。ここで、問題にしているのは、個人認証の精度です。現在のスマホ経由の個人データは、過去の国勢調査を量と質で、圧倒的に上回っています。