カフェCox~つくば市とその周辺の風景写真案内(162)

 

カフェCox

県外の橋が続いたので、この辺でつくば市に戻ります。

今回は、カフェです。

カフェ「cox coffee,pastry&meals」が正式名称みたいですが、普通は、Coxと呼ばれています。

沿革は以下です。

2004年7月、築50年の土蔵をリノベーションしたギャラリーショップ「Shingoster LIVING(シンゴスターリビング)」がオープンします。この時2階にカフェが併設されます。

2015年7月11日に、開店11周年を記念して、2階のカフェを新築の食事棟「cox coffee,pastry&meals」に移設します。つまり、現在は、敷地内にギャラリー棟と食堂棟の2棟がたっている訳です。食堂棟がCoxになります。ギャラリーで扱っているものは主に、織物、染物などの民芸品です。

食事棟は窓のない独特のデザインです。設計は新関謙一郎のNIIZEKI STUDIOです。ミニマルデザインが特徴で、外観は装飾のないシンプルな形状で、内部空間に光を取り入れ、素材のディテールを強調するようです。おそらく、ギャラリーの時のコンセプトを引きついで、設計を依頼したと思われます。料理メニューもコンセプト中心です。日常を忘れて癒しの時間を与えてくれるということで、定期的に訪れるファンも多いようです。

ここでは、料理ではなく、建築を考えてみます。評価には2つの問題点があります。

第1は、ミニマルデザインの評価です。単純なパターンの繰り返しは、心理的に絶大な効果があります。ミニマルデザインを良いと感じるためには、美術的な素養は全く不要です。これは、ミニマルミュージックにも共通しています。パターンの繰り返しは、感覚を麻痺させ、麻薬的な効果を生み出します。音楽で言えば、フィリップ・グラスをどう評価するのかという問題に共通します。ミニマルは、「気持ちが良ければそれでいいのさ」ならばOK,「これって、ちっとも進歩していない」ならばNGの世界です。

第2はランドスケープデザインの問題です。大きな建築はランドスケープを作り出す力があります。小さな建築は、ランドスケープに合わせて設計します。これは、簡単に言えば建築のTPOです。Coxの建物には窓がありません。建物は小さいですが、周りのランドスケープに合わせることを拒否しています。簡単にいえば、周囲から完全に浮き上がって、極端に目立つ建築になっています。内部空間は、外部空間から切り離すように設計されています。このため、「日常を忘れて癒しの時間を与えてくれる」という評価が出てきます。ここまで、TPOを無視した建築はないので、ドレスコード遵守派からすれば、究極のエゴイスト建築です。この点をどう考えるかで評価が全く異なってきます。

筆者は、マイケル・ナイマンくらいまでは聴きますが、グラスになるとついていけないところがあります。ミニマルは楽しまない訳ではありませんが、どっぶりつかるまではいきません。

また、ブログで、風景写真を紹介しているように、筆者は、ランドスケープに関心があり、ランドスケープを拒否した人生はつまらない人生であると思っています。

  このように、この建築の評価は、評価者の立場で決まると思います。ただし、同じようなパターンの建築が少ない理由もお分かりいただけると思います。

 

  • Shingoster LIVING

https://shingoster.com/

  • NIIZEKI STUDIO

http://www.niizekistudio.com/

  • 新関謙一郎の建築

https://blog.autumnblue.net/nizekikenichiro/

 

 

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写真1 Cox (外観)

 

 

 

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写真2 Cox (入り口ドア)

 

 

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写真3 Cox (内部天井明かりとり)