鶴の舞橋(青森県鶴田町)~つくば市とその周辺の風景写真案内(161)

鶴の舞橋(廻堰大溜池;津軽富士見湖;青森県鶴田町)

鶴の舞橋は、1991年10月から 1994年7月の工期で県営つがる富士見地区農業水利施設高度利用事業で2億6千万円をかけて整備されています。木造の三連太鼓橋では日本一の長さ(300メートル)を誇り、総ヒバ(青森県産)づくりです。橋は、廻堰大溜池または津軽富士見湖の一部にかけられています。丸いため池の一部を直線で切っているようなラインです。

写真1と写真2に橋の風景を示します。

橋は立派ですが、交通を目的とした橋ではありませんので、そこに、その施設がある必然性はありません。

筆者は天邪鬼なのかもしれませんが、竜神大吊橋でも同じですが、「この橋は〇〇が日本一だ。どうだすごいだろう」といわれると、「はい。分かりました。」とは納得しません。おそらく、こうした表現は、「粋(いき)」「粋(すい)」「わび」「さび」といった日本的な美意識とは最も離れたところにあります。それは、屈折しているのかもしれませんが、伝統的な美意識だと思っています。そういう目でみると、美意識では禁じ手の手法をつかって、まったく気に留めないというのであれば、その時点で、評価の対象外であると考えます。

この橋には、既に紹介している他の橋と同じように、次の特徴があります。

  • 工期がバブルの頃である

  • 日本一のスペックである

撮影時期は、2015年ですが、その時点で、橋は木造なので部分的には傷んでいました。竜神大吊橋は30億円以上かかっていますので、10分の1以下の費用です。同じようにテレビに出たり、映画のロケに使われたりしています。

テレビ番組と同じように、「すごいね。日本一だって。かっこいいね。絶景だね。」って喜んだ方がよいのかもしれません。ブログのビューをあげたいなら、難しいことは、いわず、絶景ブログにすべきでしょう。

しかし、そうすることは、間接的にではありますが、人口減少の原因作りに加担していると思います。

この橋は、人口減少地域の橋に共通する次の問題点を抱えています。

  • バブルのころ、あるいは、バブルの後の公共事業予算が大盤振る舞いだったころに建設された施設は、今後、維持管理費や、更新費用の捻出が困難になります。公共事業による更新はほぼ不可能です。

  • 日本一のスペックでテレビ番組で紹介されてはいますが、それでは、過疎化や人口減少の問題の解決にはなっていません。はっきりいって、テレビ番組は、過疎化や人口減少の問題解決はどうでもよく、視聴率をあげることにしか関心がありません。

  • 「公共事業で日本一の橋を作ればいい。」「他の自治体で行っている事例を真似すればいい」という金太郎飴のマインドセットは、人口減少問題から目をそらし、問題解決を不可能にします。例えば、橋の建設の代わりに、外国人の移民を拡大した方がよかったかも知れません。少なくとも、複数の人口減少対策の比較検討まではなされるべきでした。このマインドセットの問題は、現在のふるさと納税でも続いています。金太郎飴政策のマインドセットでは、問題の先送りと重症化が進みます。自治体は人口減少問題を解決するマインドセットを持っていないのです。言い換えれば、現在のマインドセットは、テレビ番組に出ればよかったというものでしょうか。

  • 橋の効果で観光収入が増えてはいますが、経済学的には、橋の効果による観光収入の増加に伴う税収増で、維持管理費や更新費用を賄えなければ、サステイナブルな身の丈にあった施設ではありません。筆者は、寡聞にして、このような視点で、公共事業の波及効果の評価が行われた例を知りません(注1)。

特に重要なポイントは、人口減少です。それは、人がいなくなれば、観光自体が成り立たなくなるからです。

 

 

注1:波及効果計算を拡大して評価した典型例はオリンピックです。東京都はお金があるので、施設の維持管理費には困らないと考えているようですが、高齢化によって財政は急速に悪化します。財政が悪化すれば、豊島園と同じように閉鎖になります。ここで言いたいことは、観光施設やレクレーション施設は、生活に必須の公共施設ではないのですから、豊島園と同じレベルで事業評価をすべきだということです。

 

f:id:computer_philosopher:20200904093232j:plain

写真1 鶴の舞橋

 

f:id:computer_philosopher:20200904093253j:plain

写真2 鶴の舞橋

鶴の舞橋ものがたり

https://www.medetai-tsuruta.jp/web_magazine/story.html

津軽富士見湖 wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A5%E8%BB%BD%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E8%A6%8B%E6%B9%96

溜池 の水辺空間を活用 した 「鶴 の舞橋」 の計画 と施工(2002)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsidre1965/70/3/70_3_237/_pdf/-char/ja

橋をつなぐ(2017)

http://www.town.tsuruta.lg.jp/syoukai/syoukai-kouhou/document/201710_29.pdf