自民党総裁選にみる危機管理の欠如

自民党の総裁選がほぼ固まって、事実上は菅義偉官房長官の信任投票になるようです。

ですが、この手順には、危機管理の欠如がはっきりしています。

今年は、米国の大統領選挙が進んでいます。大統領選挙は代理人を介しますが、国民が直接大統領を選出します。

内閣総理大臣の場合には、国会での選出になりますので、間接的な選出になります。

しかし、直接、間接の違い以外に、もうひとつ重要な点があります。それは、大統領選挙では、副大統領が大統領とセットで選出されることです。つまり、副大統領も形式的には国民の選出を得ていることになります。

その結果、大統領に問題が生じた場合には、副大統領が大統領の職務を遂行することになります。

日本にも副総理がいます。麻生氏です。現在も、内閣総理大臣が外遊中は、副総理が代印を押しているようですが、このレベルでなく、総理大臣に問題が生じたので、麻生氏が総理大臣の職務を遂行すべきという話はでてきません。言い換えれば、麻生氏が繰り上がって内閣総理大臣になるべきだという議論です。これは、危機管理システムとしては、大きな欠陥です。こうなる理由は、総理大臣の選出の時に、副総理もセットで選出されていないためです。つまり、副総理は、選挙で選ばれたのではなく、内閣総理大臣が任命したにすぎません。

次の内閣総理大臣の選出について、党員投票をするかしないかは、第1には、総理大臣が決めることです。これは、選挙による信任(党と国会)を得ているからです。米国で、トランプ大統領が、ひんしゅくをかいながらも、選挙方法について発言しているのは、信任があるからです。その次に、上下院の議長が発言しているのも議会での信任があるからです。中国のように、集団指導体制が、突然、独裁的な体制に移行するのは、選挙による信任を無視しているからです。現在の総裁選挙方法の決定の仕方は中国と何らかわりません。

問題を整理すると次の2点になります。

  • 総裁選の方法などの政治的な意思決定は、信任を得たものの発言による必要がある。これは民主主義のルールです。

  • 副総理大臣を内閣総理大臣とセットで、信任を受けるようにする必要がある。これが出来ていないと、危機管理が不可能になります。