絞りの課題
darktableで花を撮る(2)で、ピントが合っていないグラデーションのつぶれと、色飽和によるグラデーションのつぶれを区別することが重要であると申しあげました。
今回はその点を確認しておきます。以下はm4/3のカメラで、フラワーフォトとしてゼラニウムを撮影したものです。ポイントは、どこまで絞ると、花全体がボケないで撮影できるかです。焦点距離は25mm(換算50mm)です。
なお、m4/3やasp-cはフルサイズよりボケないとか、フルサイズより画質が劣るという説明がなされます。たとえば、m4/3のf1.4(25mm)のボケはフルサイズの50mmであればf2.8のボケに相当するはずだというような議論です。しかし、筆者は画角で換算することにはあまり関心がありません。m4/3のf1.4(25mm)はフルサイズのf1.4(25mm)の中央をトリミングした画像になるはずです。この2つの比較であれば、ボケと画質は同じはずです。あとは、トリミングしても、レンズなどのシステムが小さい方を選ぶか、システムの大きさは気にしないで、画角を優先するかです。スタジオでは、確実にフルサイズが有利ですが、屋外では、どちらを選ぶかは条件によると思っています。
以下の写真は、シーン参照ワークフローをつかっています。最初に、フィルミックRGB・モジュールと露光・モジュールで、色飽和を大まかに消します。次に、トーンイコライザーで残った色飽和を消しています。
写真1から5を見ると、写真3ではまだ少しボケが残っています。写真4で全体のピントがあっています(注1)。今回は、f値による変化を見るために、あえて、f値の小さなレンズをつかっています。しかし、f4.5であれば、ズームレンズで可能なf値です。センサーサイズが、これより大きな場合には、更に、大きなf値が必要になります。
被写体深度は、センサーサイズとレンズのf値できまります。一般的なズームレンズでは、最少f値は、2.8か3.5と思います。しかし、ここで見るように、f3.5でも、花を撮るときには絞り不足になる可能性があります。ですから、フラワーフォトを撮るのであれば、レンズ交換式カメラをお持ちの方は、写真1から5のような、絞りによる被写体深度の変化をテストしておくことをお勧めします。あるいは、最初から風景写真のように、ぼかさないならf8.0を使えばいい訳です(注2)。
まとめると、フラワーフォトの撮影では、f値の小さなレンズのメリットはないのです。その理由は、写真6を見ればわかります。これは犬の写真ですが、ポートレート写真であると理解してください。
写真6では、犬の頭の後方はボケています。鼻もボケています。鼻をぼかさないためには、もう少し絞るか、もう少し離れて撮影した方が良かったかもしれません。それはさておいても、写真6はボケているから意味不明な写真にはなっていません。同じf1.4の写真1を見てください。これは見るからにボケていて失敗写真です。もうお気づきとは思いますが、写真1と写真6の違いは目にあります。ポートレート写真では、目に焦点が合っていれば、それ以外は、ボケていても構いません。これがポートレートでは明るいレンズが効果を生む理由です。逆に、フラワーフォトでは、目に相当する部分がないので、ボケを除く必要があるのです。
注1: f4.5まで絞ると、背景の落ち葉が見えてしまいます。したがって、背景とはもっと距離のあるアングルをとる必要があります。今回は、花のボケのチェックだけなので、背景は無視してください。
注2: この方法では、背景もボケません。