エマニュエル・トッド「大分断」をよんで

トッドのインタビューと雑誌の記事をまとめた新書です。

雑誌の記事の割合が多いためか、インタビュー中心の中身が薄い感じはしません。

「トッドが何を問題にしているのか」という問題設定自体が大変印象深いです。

また、設定して問題を歴史的に、ダイナミックに評価検討している点は優れていると思います。

この本の中心課題は高等教育と民主主義です。これらの概念を歴史的な変遷の中で、検討することは、出来そうで、なかなかできない点と思います。

例えば、民主主義は、過去200年くらいの歴史で、どのような変遷を遂げてきたか。その変化の要因は何かを考察します。そうすることで、民主主義はほぼ終わりの状態に達していると評価しています。

トッドの新書スタイルの著書の中では読みやすいこと、応用の効く手法が紹介されているため、有益な本であると感じました。

トッドは、コロナウィルスが世界を大きく変えるとは考えていません。しかし、コロナ後の世界について、発言する責任があるとは思っているようです。

これは、本書とは関係ありませんが、日本では、コロナ後についてどうあるべきかを発言する文化人はほとんどいません。あるいは、コロナを無視した発言が続きます。例えば、今年は大雨があったので、水害が多く発生しました。水害対策は、コロナ後も同じように続けられるのでしょうか。財政にしても、人口動態にしても、同じ方向は無理があると思いますが、こうした点を配慮した政策の変更に関する発言はほとんど見られません。ハード対策の予算の確保は難しいと思うのですが。