最近の感染者数の推移~コロナウィルスのデータサイエンス(116)

日本全体で1日当たりの感染者数が1000人を越えました。

そこで、最近の傾向を見ておきます。

また、疫学に言えば、当たり前なのですが、コロナウィルスの特徴や有効な対策はまだ分かっていません。

エビデンスに基づく判断は、このように難しいです。ちょっと、考えれば、対立する仮説があれば、どちらか検証することは容易におもわれるかもしれません。しかし、データのバイアスの問題があって、データを見る限りどちらも正しく見えることが多々あるのです。出口が見えるまでには、時間がかかりそうです。

こうした不確実な状況下での意思決定は、2つの問題を抱えています。

  • 論理的に最適な意思決定をすることは、確率の問題になります。前提条件の設定が難しいです。

  • 選択した意思決定結果を広く国民に伝えて理解してもらうことは難しいです。

ですが、既に、コロナ問題が発生して、数か月が過ぎたので、この2つの問題について、少しは前進があることを期待したいです。

首都圏

図1は首都圏の10万人あたり感染者数(左軸:人)です、右軸は古いグラフの痕跡なので無視してください。

データは7日移動平均です。感染者数は減ってはいませんが、増加速度は落ちて、横ばいに近くなっています。

 

 

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図1 首都圏の感染者数の推移

 

 

大阪府

 

図2は大阪府の感染者数(左軸:人)の推移で、7日移動平均です。こちらは、10万あたりではなく、実数です。増加は7月に入ってからです。

 

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図2 大阪府の感染者数の推移

 

 

愛知県

図3は愛知県の感染者数(左軸:人)の推移で、7日移動平均です。こちらも、10万あたりではなく、実数です。増加は7月15日以降です。

 

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図3 愛知県の感染者数の推移

まとめ

首都圏の感染者数は増加速度が小さくなってきています。

一方、大阪府と愛知県では、感染者数は増加しています。

昨日は、岩手県での東京から移動した感染者が出ました。

GoToトラベルの開始時期に、三密を守れば、移動は関係ないという趣旨の発言をされた専門家の方がいました。

筆者の意見は繰り返しになりますが、次です。

  • コロナウイルスの拡大を現在の拡散モデルで検討するのは無理があります。移流項と拡散項を含んだモデルにすべきです。

  • 移流項と拡散項を含むモデルの場合、一般に混合に対する寄与は、移流項が拡散項より大きくなります。これから考えると三密対策(拡散の抑制)よりも、移動制限(移流の抑制)の方が効果があるはずです。感染の拡大が移流項に対応するGoogleのTransitである程度まで説明できることは、この見解を支持しています。逆に、病院でも院内感染が起こっていますので、三密で感染を防止することは難しいと思われます。ですから、三密で感染が防げるというエビデンスはありません。ただし、ここでいう三密は、理論的な完全な三密ではなく、普通に注意すれば実現できるレベルの三密のことです。この2つは、区別する必要があります。

結局、現状は東京都の感染に有効な移動制限をしなかった結果、感染を全国(ここでは、大阪府と愛知県)にばらまいてしまったことがデータからは見てとれます。

引用

  • NHK特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/