東京都は新しい感染拡大ステージに入った~コロナウィルスのデータサイエンス(101)

7月5日に新しいGoogoleDataが公開されたので、追跡しておきます。

先に、結論を申し上げますと、Googleデータと東京都の感染者数の傾向は、対応しなくなりました。

最初に、今までの知見を振り返ります。

  • 行動制限により感染者数が減少する効果が発生する境界は、ー30からー40%の間にあると思われる。行動制限が-30%より小さくなると感染者数を抑える効果はほぼ期待できなくなる。(西浦モデルのー60%で増減なしよりは緩い基準で効果が見られる。)

  • 行動制限にTransitを使う方法は、電車が主な移動手段である東京都周辺ではよくあてはまるが、路線数の少ない札幌では、あまりよくあてはまらない。

Google Dataでは、東京の行動制限率はほぼ、-30%にまで低下しました。AppleDataでは、ほぼ0です。

その結果、4月頃から、およそ、3か月間続いていた対応関係がなくなりました。

現在の東京の感染者数の増加は、行動制限以外の要因で増加しています。

東京都のコロナウィルスの拡大は新しいステージに入りました。

図1が首都圏の感染者数の推移、図2が東京都の感染者数の推移です。

行動制限は共に東京のデータです。感染者数、行動制限は直近7日間移動平均です。行動制限は14日日付をずらしてあります。これによって、行動制限の変化が感染者数の影響する場合には、その対応をみることができます。

図1から、東京都と首都圏(1都3県)の変化は同じ傾向にあります。

行動制限(GoogleTransit)と感染者数の変化は、首都圏では、まだ、対応しているようにも見えますが、東京都は明らかに、行動制限のトレンドより、急増しています。

図2は、東京都の感染者数の推移です。図2では、図1より長期的な変化が見えます。

行動制限が緩みだした5月24日(元の日付では5月10日)頃から、6月28日頃までは、GootleTの行動制限の変化と感染者数の変化がほぼ同じ距離をおいて変化しています。6月28日ころから、この関係がくずれ、7月3日に2つの線が交差し、その後は反転していきます。交点の行動制限率は約-35%です。

図2に、これと、前回の非常事態宣言後の行動制限の比較の説明のための補助線を加えたものが図3です。

図3の左の点線の円は、前回に感染者数が増加から減少に転じたときの、行動制限率を示します。これは、-35%付近です。行動制限率と感染者数の間には2週間の時間遅れがが入っていますので、4月14日の感染者数の減少は、4月1日頃の行動制限が効いたと読めます。その時の行動制限率はー35%なので、、これより行動制限が下がると、効果は期待できないことをグラフは示唆しています。もちろん、どこで、行動制限が効くかが、感染者数の影響を受けますので、-35%は大まかな指標でしかありません。しかし、神奈川や大阪を見ても、-30%からー40%の間に、この変換点がありそうだというのが、今までの解析の結果です。

7月の感染者数の増加で、グラフの上では、感染者数と行動制限の線が交差しましたが、この2つの曲線の軸が異なるので、交点自体には意味はありません。問題は、図3にみどりの点線でトレンドを示したような、行動制限率と感染者数のトレンドの対応が、6月28日頃から、崩れている点にあります。この並行関係が崩れてきたときの行動制限率がー35%付近であることが重要です。これは、行動制限が感染者数に影響する最少の行動制限率の知見に一致するからです。つまり、行動制限で感染を抑える効果はほぼなくなっていると思われます。そうなると、別の対策をしない限り、感染者数は急拡大すると予想されるわけですが、実際の感染者数はその通り急増しています。

東京都は、現在、新たな対策をしなければ、今後の感染拡大が抑えられないフェーズに達していると思われます。

 

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図1 首都圏の感染者数の推移(右軸:10万人当たり感染者数(人)、左軸:行動制限率%)

 

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図2 東京都の感染者数の推移(右軸:感染者数(人)、左軸:行動制限率%)

 

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図3 東京都の感染者数の推移(右軸:感染者数(人)、左軸:行動制限率%)

引用

  • NHK 特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.07.07>7-5version.

https://www.apple.com/covid19/mobility 7-5version Accessed<2020.07.07>.