人治政治とコロナウィルス(2)~コロナウィルスのデータサイエンス(99)

中国の統治

中国は、30日に、「香港国家安全維持法案」を成立させました。

以下、ニューズウィーク(6月30日)の記事の一部を引用します。


中国の国会に相当する全国人民代表大会全人代)常務委員会は30日、「香港国家安全維持法案」を可決した。1997年に英国から中国に返還されて以降、高度な自治が保障されてきた香港にとって歴史的な転換点になりそうだ。

法案の詳細はまだ公表されていないが、中国は、国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託の4つが処罰対象になるとしている。

国営新華社通信は今月、同案の一部詳細を伝えており、新たな国家安全法制は香港の現行法に優先し、全人代常務委員会が法解釈の権限を持つとしている。


この法律は、全人代で決めているので、議会の代表制に問題があります。

イギリスは香港の返還時の約束(付帯文書)が守られていないことに反発しています。

香港の例は、法治主義では考えられない暴挙です。一方、人治主義が依然として行われていると考えれば、予想される当然の結論になります。

 

「香港国家安全維持法」の全文がまだ、明らかでないようです。法律の全文が明らかになる前に既に逮捕者がでているようなので、これもすごいことだと思います。さらに、時事通信(7月3日)は次のように伝えています。


中国政府による香港統制を強化する「香港国家安全維持法」は、外国人や香港以外での行為も対象としている。


これも、国際法に完全にケンカをうっています。

ですので、法治主義では許しがたい暴挙ですが、人治主義であれば、支配者の意のままにということになります。

ロシアの統治

ロシアでは、憲法を改正して、プーチン大統領の続投を可能にしました。簡単に言えば、帝政ロシアに後戻りです。ロシアの後進性は、常に、文化人を悩ませてきました。ドフトエフスキーも、後進性が永久になくならないのではないかと悩んでいたと思います。共和制から議会を使って帝政に移行した例は、ローマ帝国カエサルなどもあります。議会の議決があって法律で認めても、法治主義の条件が満たされなければ、帝政になります。現在のロシアは人治主義国会になっています。

韓国の統治

韓国については、歴代の大統領が失職すると、有罪になる例が、多発しています。法治国家ではなく、人治国家でなければ、おこりえませんので、人治国家であるといえます。人治国家ですから、国際法も守らなくて当然になります。

日本の統治

筆者は日本は特殊な人治国家ではないかと考えています。

特殊というのは次のことをいいます。

  • 大統領や国家主席に相当するような絶対的権限をもつポストがないので、集団指導体制になります。

  • 代表を選ぶ選挙は正常に機能している。(これは、手続きのことで、衆愚制が回避できているかは別です。)

  • 人治主義ではあるが、部分的に法治主義がある。

一般に、独裁者がいる場合には、都合で法律を変えることができます。日本国内でも、都合に合わせて、法律を変えることが頻発しています。最近では、検事総長の定年延長問題が展開的な例です。ここでは、法律は、支配者の意思を伝達する機能をもつものであって、民意を代表するものではありません。人治主義の典型例です。

ところが、支配者が変更できない法律があります。日本国憲法です。しかも、憲法を制定したのは実質はGHQです。憲法が民意を経てせいていされていないこと、憲法が、法治主義国家として必要な条件を考慮して決められてたことから、日本は対外的には、法治国家です

憲法改正を、国内法と同じように人治主義で行ってしまうと、国際的な信頼は失墜してしまいます。国内は既に人治主義になっていますので、これ以上、法治主義でないことでも問題が生ずることはありません。しかし、憲法以外に、対外的な問題で、どこまで、法治主義を貫けるかは、国際的な法治主義国家としての評価の問題になります。

具体的には、例えば、対中関係のスタンスが問題になります。香港問題と、中国の国家主席国賓でよぶ問題は、人治主義であれば、支配者の都合でそのまま不問になりますが、法治主義では、日本の対外政策のガイドラインには統一性と継続性がどこにあるのか問われることになります。

 

東京都の 新たなモニタリング項目

東京都のコロナウィルスのモニタリングに対して、NHK(7月1日)は以下のように報道しています。


東京都は6月30日に、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、見直しを進めてきた新たなモニタリング項目を取りまとめました。感染状況や医療体制を専門家に分析してもらい、都が評価して注意喚起するかどうかを判断するということです。一方、新たなモニタリング項目には、都民に警戒を呼びかける基準となる数値は設けられませんでした。


基準は設けずに、支配者の意思で、警報や非常事態を決めたいというので、これは、明らかに人治主義です。

法治国家であれば、感染情報と判定基準の開示が必要になります。

データサイエンスは、法治国家の学問でもあります。

まとめ

ロシアの含めて、ユーラシア大陸の国には、依然として、人治主義が蔓延しています。

これは、リーダーシップの問題でもあります。

歴史をみれば、人治主義の場合でも、名君が統治する場合には殖産興業が進みます。おそらく、名君が出た場合には、法治主義よりも素早く殖産興業が進むこも多いと思われます。

しかし、専制主義には、名君を担保するシステムは内在していません。この点では、完全にギャンブルになります。

日本では、一応まともな選挙があります。だからと言って、実態をみれば、忖度がはびこって、選挙制人治主義になっています。ここと、民主主義に基づく法治主義の間には、まだ、大きな距離があります。

民主主義に基づく法治主義が勧められる理由は、次の有名なチャーチルの言葉が的を得ています。

「実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。」

 

引用

 

NHK 東京都 新たなモニタリング項目 7月1日

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/number-tokyo/new-monitoring.html

 

中国、香港国家安全維持法案を可決 欧米との対立激化も

ニューズウィーク 6月30日

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93821.php