人治政治とコロナウィルス(1)~コロナウィルスのデータサイエンス(97)

6月30日には、中国の全人代「香港国家安全維持法」が成立し、東京都が「コロナウィルスの 新たなモニタリング項目」が提案されました。この2つには統治の上での共通点があるので、今回はこの点を考えてみます。

人治統治と法治統治

統治には、人治統治と法治統治でがあります。言うまでもなく、法による統治が「法治統治」です。これに対して、「人治統治」は、誰が言ったかで統治が決まります。江戸時代であれば、将軍のいったことは絶対です。あるいは、絶対王政時代ではあれば「朕は国家なり」です。この言葉は「1655年4月13日、親政開始前のルイ14世 (フランス王)が、最高司法機関高等法院を王権に服させるために発した」(wiki)といわれています。王権神授説に従えば、王様の言葉は絶対です。

しかし、江戸時代にも絶対王政のフランスにも法律はあります。これは、毎回すべてのことを将軍様に問い合わせていては、何事も進みませんので、簡単に言えば、法律は発言録に近いものです。しかしながら、発言録はそのままでは、時に矛盾した内容を含んで、解釈に混乱を招くリスクがあります。これは、著名な発言録である論語を見ればわかります。発言というものは、ケース・バイ・ケースなので、発言がなされた背景が正確に記録されていないと解釈にブレが生じます。また、発言する側も過去の発言を一字一句記憶して、それと、矛盾がないように、新しい発言をチェックしているわけではないので、、新しい発言が古い発言を否定すことも良くあります。しかし、絶対君主といえども、毎日朝三暮四を繰り返していれば、指導力が落ちてしまいます。なので、独裁政権でも発言録ではなく、法律が必要になります。

さらに、中国の場合には、国土が広く、方言がきつかったので、皇帝が、法律を作っても、そのままだと、地方による文言の解釈がことなり、全国統一の法律実施は難しかったようです。そのために官僚は科挙で採用し、試験内容は儒学の経典でした。もちろん、時代により試験内容は変化し、一言でいうことは乱暴です。科挙を教養試験と考えることもてきますが、実務的には、文言の解釈の統一を図ることで、法律の画一的な実施を図ったという説があります。筆者は、これがあったていると思います。

話を戻します。専制主義でも民主主義で法律は作られます。法律があることと民主主義は関係がありません。大きな違いは、法律の位置づけです。専制主義では、法律は、独裁者の意図を代弁するものです。従って、独裁者が意図を変更すれば、法律は変わります。これは人治主義といわれます。民主主義では、法律は民意を代表するものです。これは法治主義と呼ばれます。

法治主義が成立するためには次のような条件が必要と思われます。

  1. 代表制民主主義の場合に、民意を代表する議員の選出方法と選挙権の付与の仕方。選挙があれば、法治主義かは、選挙が介在すると、1,0ではなく程度の問題になります。大日本帝国憲法は、江戸時代よりは、確実に法治主義ですが、選挙権の問題があり、現在よりは劣ります。

  2. 法律内容の時間的継続性。時代が変わると民意、技術変化などにより、例外的に法律を変える必要が生じることがあります。しかし、専制君主のように、突然、明確な理由なしに、法律を変えることはできません。また、一般には、法律は、変化しにくい事項を選んで作成し、パラメータなど、変化しやすいものは、法律の下に実施要項などを決めて別途定め、法律の頻繁な改訂を不要にします。コロナウィルス対策では、急激な社会変化に対応すつために特別法が作られましたが、これは、例外で、通常の法律の枠では対処できないためです。

  3. 法律の文言の解釈の確実性と文言解釈の乱用の排除。これは、最高裁で、問題になり、裁判になり解釈事項です。当たり前ですが、これが、頻発すると、法律は欠陥法律で、効力がなくなります。

  4. 法律の国内と国外の扱いの一致。法律は、国内法で、国外のことを規制はできません。しかし、国際法は、各国が国内法を守るという前提のもとに成り立ちますから、国内法が順守されない国に対しては、国際社会は、その対処に苦慮します。また、自衛隊は軍隊ではないという解釈論も、自衛隊が対戦相手になった場合には、諸外国には意味のない文言解釈の乱用とみなされると思われます。

  5. 付帯文書の重視。法律を作成するときに付帯文書が付くことがあります。たとえば、消費税を課す法案を成立させる時に、「消費税は1度限りで、利率は上げない」ので法案に賛成して欲しいという主張がなされます。法案が成立してしまうと、この付帯文書は法律ではないので、違反しても、違法ではありません。しかし、だます意図をもって、発言し、それによって利益を得るのは、詐欺になります。もちろん、議員さんは、選挙前には山盛りの公約を掲げて、議員になったら、一つも実現しないというのはよくある話です。しかし、それは不作為です。嘘をついて、法律を作ることとは悪質さのレベルが違います。

 

以下、各国の分析が続きますが、区切りが良いので、今回はここまでにします。

引用

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%95%E3%81%AF%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%82%8A